(1) 吸気行程
クランク軸が180°回転しピストンが最上位から最下位に下降すると,シリンダの容積は広くなるが,シリンダ内の圧力は大気圧より低下して負圧となる。そこでピストンが下降する時に動弁装置で弁を開けば,その弁をへて空気がシリンダ内に入ってくる。この空気の量が燃料の燃焼に大きく影響する。即ち,燃焼には最低限必要な空気量が決って居り,したがって空気量によって燃料の量が決定し馬力もきまる。従って馬力を大きくするにはこの吸入空気量を多くすればよく,例えば空気を予圧して送り込む,或は一定時間当たりの吸入回数すなわち燃焼回数を大きくすることより,大きな出力をだすことができる。この行程を吸気行程と言う。
(2) 圧縮行程
吸気行程の次にクランクが180°回転しピストンが上昇する時,吸気弁および排気弁を閉じて逃げ場を無くせば空気はピストンにより圧縮され圧力が高くなる(ボイルシャールの法則による)。この上昇行程の終りには空気の圧力と温度は燃料を着火燃焼させるのに十分なまでに上昇する(大体空気を1/20の容積に圧縮すると圧力は40〜45kgf/cm2,温度は550〜600℃となる。この温度は鉄を薄赤する程の温度であり赤熱空気とも呼ぶ)。
また別の考えからすると,同じ量の燃料が燃焼する場合に,圧縮すればする程大きな爆発力が得られることになる。ディーゼルエンジンは他のエンジンにくらべて圧縮比が最も大きいため,大きな爆発力が得られるのである。この行程を圧縮行程という。