ではなく,どんな部品が,どっちの方向に,どんな形で,どのようになっているかといった位置や距離の関係,破損,変形や異常の状況をメモすることが非常に重要で,故障の原因を突き止める一つの道しるべとなるはずである。
このように事情聴取と現物の把握をきめ細かく行い,故障が摩耗,腐食,亀裂,振動,異常温度,変形,果物混入,および漏れなどによるものか,また,一次的なものか,二次的なものか判断することが重要である。
3)現物の確認検査
2)項の実態調査を踏まえて,下記点検および計測を行い判断資料を集める。
(1)点検
整備または修理前の状態を点検検査し,記録しておくことが大切である。例えば,油,水,ガス漏れの有無,ターエングの状況,噴射時期,バルブタイミング(弁隙),潤滑油の汚れ具合,塗装の焦げ具合,各部締め付けボルトの弛みの有無等々。
取扱説明書,整備解説書(マニュアル),整備・修理基準,機関の履歴簿などを準備し,よく目をとおし,今回の作業に必要な専用工具の有無,注意しなければいけないことなどをチェックしておくことは,その後の作業をスムーズに進めることにつながる。
小形漁船の場合には,その稼動状況(使用負荷の状況)を把握するために,2ヶ所の封印(燃料最大噴射量制限封印及び無負荷最高回転速度制限封印)が解除されていないことを確認すること。
(2)計測
点検整備(定期検査・中間検査を含む)を行ない,故障の場合でも運転が可能であれば,航走運転を実施し,異常音,異常発熱,振動,漏れなどの有無をチェックするとともに,各回転速度(負荷)のときの,各部温度(機関室,排気ガス,冷却水,吸気,潤滑油,燃料油など),排気色,各部圧力(給気,潤滑油,冷却水,クラッチ作動油・潤滑油,燃料油など)を計測し,2・23表に示すような運転成績表に記入して,陸上公試・海上公試時のデータと比較分析し,問題の有無を把握しておくことが重要である。往々にして,これを省略したために,後々,トラブルの原因になることがあるので注意すること。
また,以上述べてきた整備・修理前の調査,検査結果を整備前の記録としてまとめておくことが大切である。
(3)検査の有無
まず,検査対象船舶であるかどうかを確認する。検査対象船舶の整備の場合には,定期検査か,中間検査か,または通常の定期点検(一年点検,出漁前の点検など)であるのか,明確にしておくことが大切である。また故障修理の場合でも,その内容(クランク軸,運接棒,過給機など機関の主要部の変更)によっては,臨時検査の対象となるので注意すること。