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「柏原によせる思い」

松永史子

 

さくさくと霜柱を踏んで、バリバリと氷を踏みつけて………と言いたいところですが、暖冬の今年にはあまり出合わなかった、霜・氷。しかし、山の斜面を被っている木々は枯れ、地肌までのぞかせています。道端の草木も今は春をじっと待ち続けています。

先日保育園の4歳児のY君が「先生、見せたろ!」と、言うのでビニールの中を覗くと沢山の“蕗のとう”。春の匂いがプーンとしました。私がいつまでも袋を覗いていましたので、何か不安に思ったのか、「早よ、返して。」と、袋を持って行ってしまった。春に出会い、何かしら心温かくなった一時でした。「Y君有難う。」

柏原は日本のほぼ中心に位置し、交通の便がよく、大阪・京都・名古屋に及ばず、ちょっと足を伸ばせば関東地方まで日帰り圏内に入ります。

主人のお姉さんやお弟さん達が帰ってこられると、「柏原はええなー!」と言われます。静かで一歩出れば土・澄み切った空気・水のおいしさ等々。しかし、実際に住んでいる者にとっては厳しい冬やさまざまなしがらみ等あり気楽な事ばかりではありまん。しかし、子ども達は純粋で、オリンピックの開会式に“華”を添えた雪ん子の様に愛くるしく、この子達が、ふるさとの大きな懐に包まれながら育まれ、大人になっても住みたい・生活したいと思うほど、歴史と自然と人間と共有出来る“柏原”であり続けてほしいと思っています。今、私に出来る事は何であろうかと自問自答をしています。また、出来る事から一歩前進したい。

1998年2月

 

 

 

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