2-2 昆虫
1) 調査方法
昆虫類生息調査は1997年8月8日〜8月10日に行い、目視と採集によって種を確認した。なお、採集には以下の4つの方法を併用した。
ネッティング法:捕虫網を用いて飛翔している昆虫や植物体上にいる昆虫を採集した。
ベイト・トラップ法:プラスチックコップを口が地面と同じ高さになるように地中に埋め、その中にサナギ粉を入れ昆虫を誘引し採集した。今回トラップを設置した場所は4ヶ所で、計画地の環境に応じて決定した(図1)。
ライト・トラップ法:夜間にライトを点灯し、そこに集まる昆虫を採集した。今回は計画地の2ヶ所にトラップを設置した(図2)。
ザルによる水生昆虫の採集法:湿地や小川に生息する水生昆虫をザルですくって採集した。
2) 調査結果
今回の調査では、14目96科275種が確認された(表2-2)。調査地は主にアカマツ林帯、広葉樹林帯、湿生植物帯の3つに区分でき、確認された昆虫の中にはそれぞれの環境に特徴的な種がいくつか見られた。具体的にはチッチゼミやエゾゼミはアカマツ林に多い種であり、オオミドリシジミやミズイ口オナガシジミは計画地内に広葉樹林として多く見られるミズナラを、ミドリシジミはハンノキ類を食草としている。ジャノメチョウ類は、湿生植物帯の優占種であるイネ科やカヤツリグサ科を食事としている。
レッドデータブック(1991、環境庁編)記載種は確認されなかったが、全国でも生息地が局所的なハッチョウトンボを2ヶ所で確認した(図2、写真2-7、写真2-8)。ハッチョウトンボは平地や丘陵地、低山地の日あたりの良い常に水が湧き出している浅い湿地に生息するが、そのような環境は乾燥化によって消滅しやすいので開発にあたっては注意を要する。本種はモウセンゴケやミミカキグサが生育する環境に生息するので、これらを指標植物にするとよいと思われる。なお、計画地内にはコモウセンゴケとミミカキグサの一種Utricularia sp.が生育していた。また、ゲンゴロウ類が多く生息していることは注目に値する。今回調査対象外であった古墳群の南側に位置するため池を含めると、水生昆虫の種数は大幅に増大すると思われる。