2. 眺山丘陵の特性
2-1 植 生
1) 自然的条件について
山形県の最南部、置賜地方のほぼ中央に川西町は位置する。南には米沢市、東部には高畠町、西北部には飯豊町、東北部に長井市、南陽市に接している。川西町の西部には標高250〜350mの玉庭丘陵が蟠踞し、古墳群のある下小松丘陵地帯は通称眺山(丘陵)と呼び、玉庭丘陵の東側に位置している。丘陵の東麓には小松、犬川の街並みや集落が存在し、眺山丘陵はいわば町の背景となるグリーンベルトといえる。かつて明治時代初期イギリス女流旅行家、イザベラ・バードが越後街道を辿り、諏訪峠を越えてこの町に入った時、眼下に広がる置賜盆地の、見渡す限りの美田と安らかな民家のたたずまいを見た時、思わず「東洋のアルカディア」と叫んだのも宜なるかなである。4月から10月までは日中気温が20〜30℃で比較的温暖であるが、11月ともなれば、寒冷なシベリア気団が、日本海を越えて、荒川渓谷沿いに宇津峠を越え飯豊町から眺山丘陵沿い米沢盆地迂回進行する。
そのために気温は-5〜15℃に低下し、多量の積雪をもたらすことになる。そのため積雪期間が長くなり、この地方の植生をも特徴づけていると考えられる。
2) 植生の概況
植生を左右するものは気候の他に、地史、地質などが影響することは言を埃たない。
眺山丘陵は標高250〜300mという低山で南北に連なっている。調査の都合で、古墳の存在する地域を3区域に区分した。?区は、小森山古墳群を中心とした地域、?区は鷹待場古墳群周辺の地域、?区は薬師沢古墳群地域である。3区域はそれぞれ小沢による凹地で隔てられている。そこには湿地や湿原が発達し、湿性群落が見られるのである。また3つ隆起は共通した地史資質をもつものと考えられる。即ち地質は古赤褐色と呼ぶ 洪積世ウルム間氷期(年平均気温20〜23℃と推定)頃に形成堆積した泥土といわれる。褐鉄鉱やくされ玉(流紋岩や安山岩花崗岩などが風化し礫状になったもの)を含有するために酸性で痩薄な土壌である。またこの土壊は風化して水を含むと風化して粘土化し、水の不浸透層を形成する。
小沢や凹地に湿原や湿地が多いのはこのためであろう。そこにミズゴケをはじめ多くの湿性植物が進入して泥炭層を形成し、山形県でも珍しい特異な植生を見ることができる。
植生は概して冷温帯低山性植物で占められている。その優占種はコナラ、アカマツである。ところが付近一帯には里山造林にシラハタアカマツが植えられ、その種子が散布され