第5章 駅用直角二方向エレベーターの仕様と製品構成
5.1 駅用直角二方向エレベーターの開発経緯
5.1.1 駅用直角二方向エレベーターの開発目標
既存駅に新たにエレベーターを設置する場合、既存駅の特殊性に対応するために、設置するエレベーターの開発目標の主な点は次の通りである。
(1)省スペース化
エレベーターを設置するプラットホームやコンコースは、連続的に、かつ大量の旅客が移動する重要なスペースである。
このプラットホームやコンコースは、既存駅ではエレベーターを設置することを想定して設計されていない場合が多く、新たにエレベーターを設置するために捻出できる平面スペースには制約がある。また、垂直方向のスペースに関しても、駅舎施設の構造上、ピット寸法やオーバーヘッド寸法の確保に制約がある。
従って、従来のエレベーターでは大掛かりな駅舎構造の改造をしないとエレベーターが設置できなかった既存駅にもエレベーターが設置し易いように、省スペース化が重要かつ必要である。
(2)エレベーター出入方向の自由度向上
旅客流動を円滑にするため、駅舎における動線計画の考え方では、プラットホームでは列車の進行方向である線路と平行方向、一方コンコース階では線路と直角方向に主動線をとることが多い。
これに対応してエレベーターを設置するためには、エレベーターの出入口は、プラットホーム上では円滑な旅客流動の確保及びエレベーター利用者の安全性確保のため、線路と平行方向に出入りするように配置する必要があり、一方、コンコース階では、コンコースに面し、線路と直角方向に配置する必要が生じる。
このためエレベーターの設置に伴う既存駅舎の改造を極力少なくするためには、エレベーターの出入口はホームとコンコースの上下階で90度位相を変えた直角方向に配置する必要がある。
(3)総建設費の低減
既存駅舎の改造工事費用をできるだけ低減できるエレベーター構造とすることによって、総建設費の低減をはかる。勿論、エレベーター本体も低コストであるのが望ましい。
(4)ノーマライゼーション
移動制約者の優先利用をはかると共に、移動制約者(特に車いす使用者)が単独でもエレベーターを利用できるように、その操作の容易化をはかる。
5.2 駅用直角二方向エレベーターの基本仕様
5.2.1 駅用直角二方向エレベーターの基本仕様の考え方
既存駅舎に設置するエレベーターは、少なくとも次の要件を満たすことが望ましい。