第1部
2. 基調講演
わが国におけるノンステップバスの現状と将来
東京都立大学大学院工学研究科専任講師
秋山 哲男
東京都立大学の秋山と申します。
今日これから「わが国におけるノンステップバスの現状と将来」ということで、お話をさせていただきます。
まず最初に申し上げておきたい点は、高齢化社会あるいは高齢社会の中で高齢者、障害者のモビリティを保障することがどれほど重要なのかという点です。過去に人の生活の3要素というのは「衣・食・住」、衣類と食事と住まいの3点でしたけれども、新しい生活の3要素は「医・職・住」つまり、衣・食・住の衣は「医学」に変わってきているでしょう。食は多分「職業」になってきているでしょう。住宅は依然問題である。では交通はどうして入ってこないのかということで、岡並木先生は大分前に交通も入れるべきであるということをおっしゃっています。「医・食・住・交」です。その意味で交通がいかに重要であるか。移動することによって、その人の健康がどれだけ保てるかも非常に重要なことです。今日はそれを進めるための一つであるノンステップ化というのはどういう意味があるか、私なりに考えたことをご紹介させていただきたいと思います。
今日お話しする内容は6点ございます。1点目はノンステップバスとは一体何なのか。2点目にノンステップバスの意味はどんなところにあるのか。3点目にノンステップバス(ローフロアバス)はどの様に発展してきたのか。4点目にノンステップバスの車両とその利用者について。ノンステップバスも含めて、一体バスの車両はどの様に変化してきたのか。5点目に交通計画全体の中でノンステップバスをどの様に位置づけたら良いのか。最後にノンステップバスの現状と将来ということで、こんなことを考えていくべきだということを申し上げたいと思います。
1. ノンステップバスとは
ノンステップバスは欧州ではローフロアバスと呼ばれています。ローフロアバスを翻訳すると低床バスということで、日本語では全く違うバスを意味してしまいます。その意味で日本の低床バスはイコール欧州のローフロアバスではない。そういったことをまず定義として挙げておきたいと思います。