廃船の適正処理について
海洋レジャーを愛好されている方にとって、愛艇を廃船にするときには、ともに楽しみ、ともに危険を乗り越えた思い出等、様々な思いがよぎり、労苦を労うとともに、一抹の寂しさを持って適正に処理されていることと思います。しかし、なかには海岸に放置したり、舟溜まりに係留したまま管理せず朽ちるがままに任せる等の処理が跡を絶たない状況にあります。良き伴侶であった愛艇を朽ちるがままに放置することは海洋レジャー愛好者としてのモラルに関わる問題ではないでしょうか。
船舶を海洋投棄すれば、大雨や高潮等により、係留索が切れたりして水船状態で流れ出し、船舶の安全運航を阻害することとなります。特に小型船にとって、これらの漂流廃船等は大事故の原因にも成りかねません。また、流れださないまでも海岸に朽ち果てた船舶が無残に放置されている景観は、古来、日本の海岸を讃える言葉としての「白砂青松」と程遠く、著しく美観を損ねます。
安全で明るく、しかも青く美しい海を楽しみ、それを子孫に引き継いでいくことは、今を生きている私たちの責任であり、多くの人々の願いでもあります。小型船による安全で楽しい海洋レジャーの普及を願う当協会にとりましても、廃船の適正処理について一層の取組みが必要と考えております。
海上保安庁では、平成7年度から「廃船指導票(オレンジカード)制度」を導入し、廃船の適正処理の促進に努めております。
この制度は、投棄されていると思われる船舶が、船舶の係留の状況から客観的に判断して、誰にも管理されず、他の船舶等に危険を及ぼすおそれがあり、また、景観を著しく損ねていると考えられる場合は、海上保安部などが「廃船指導票」を貼付し、「廃船指導票」を貼付された船舶所有者は約1ケ月の猶予期間中に海上保安部などに、廃船でない場合はその旨を申告し、速やかに適正な係留状態にあらためること。廃船である場合は適正処理をするための廃船の処分方法等、必要事項を連絡することが要求され、保安部などは適正処理が終わるまで監視します。
約1ケ月の猶予期間中に全く連絡がない場合には、処理する意思がないものと判断し、法律の定めに従って取締りを行うこととなっております。
当協会の会員の皆様は、船を適正に管理するとともに、廃船にする場合は適正に処理するようお互いに注意して、会員以外の方々に対しても、現場指導の機会等を利用して積極的に周知活動を展開していただくよう皆様のご協力をお願いいたします。