4.5 海洋気候の長期変動解析
ここでは、KoMMeDS-NFとCOADS.MSTGとを併せた新しい海洋気候データセットを用いて、海面水温、気温、風速、東西風速成分、南北風速成分及び海面気圧の長期(1854年〜1992年)変動を調べた。解析の対象とした海域は気候ノイズを押さえるため図4.9に示す10度BOXとし、1961年〜1990年の30年平均(平年値)と月平均値との偏差で解析を行った。
先ず、月平均海面水温偏差の時系列を示したのが図4.10である。図中の細線が月平均海面水温偏差であり、その5年移動平均値の95%信頼限界を太線で示している。どの海域も年々95%信頼限界が狭くなっており、データ数の増加と共に信頼性の高いデータセットとなっていることが分かる。しかし、第二次世界大戦(1941年〜1945年)中のTOKYOはデータ数も少なく、95%信頼限界も広くなっている。また、同時期のHAWAIIを見ると、戦時中のみ水温偏差が1℃程度高くなっているのは興味深い。また、TOKYO海域において1905年、1925年、1935年に海面水温が下がっているが、単なる振動であるか、何かの気候シグナルであるかの解明は今後の課題である。
変動の少ないHAWAII海域を見てみると、1940年頃を境に1℃程度海面水温が上昇している。これは山元ら(1986a、1986b)が提唱している「気候ジャンプ」に相当しているものと思われ、他の2つの海域でも海面水温が上昇している。
同一のデータを基に15年の移動平均を算出したのが図4.11である。この図のHAWAII海域を見ると1940年頃を境に海面水温のシフトアップが見られるが、TOKYO及びSAN FRANCISCO海域の海面水温偏差の変動には80年程度の周期がありそうである。
次いで、海面気温について同様に解析した結果が図4.12〜13である。海面水温と同様第二次世界大戦中に気温の上昇が見られるが、戦時中は船室内で気温観測を行っていた船が多かったためと思われる。また、HAWAII海域で見られた水温のシフトアップは気温では見られなかった。しかし、1940年頃の「気候ジャンプ」らしきものは存在している。
風速、東西風速成分、南北風速成分について解析した結果を図4.14〜19に示す。やはり戦時中は特異な傾向を示しており、風速の場合、前後の年より約2m/s低くなっている。さらに風の場合は1945年頃を境に気候変動が現れており、水温及び気温の変化に遅れて変動していることが分かる。また、HAWAII海域では、風速は増加しているのに対し、東西成分は減少、南北成分は不変となっていることから、偏東風が増加していることが分かる。これは、Whysallら(1987)の示した結果と同じ結果である。
最後に、海面気圧について解析した結果を図4.20〜21に示す。他の要素に比べ個々の変動幅が広く、データ数も少ないことなどから有意な変動特性は見いだせない。