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平成8年度 消防に関する論文 最優秀作品

トラッキング現象による出火防止機器(電気コンセント部分)の研究開発について

富山市消防本部 堂田武宗

 

1 本機器の研究開発に係る背景及び目的

最近、電気火災の原因のうちトラッキング現象が原因と思われるものが注目されてきています。長期間電気コンセントに差し込まれたプラグが突然発火するというものです。

平成7年中における全国総火災件数62,974件で、そのうち爆発を除く建物火災は34,430件(全火災の54.7%)となっています。

この建物火災の出火原因で電気機器・装置、配線器具等、電気に起因すると思われるものが2,289件(6.7%)を占めておりますが、トラッキング現象が出火原因とされる火災について各都市へ照会したところ、製造物責任法(PL法)の対応や公文書公開条例、個人情報保護条例等もあいまって火災原因を究明するにあたり、その実証が容易ではないことを聞いております。

東京消防庁における過去五か年のトラッキング現象による火災件数(表1)を見てみますと電気火災件数は平均910件、そのうちトラッキング現象による火災件数は64件(7.0%)となっており、全国の電気に起因する出火件数2,289件のうち7%を単純にトラッキング現象によるものとみた場合は161件ということになります。不明火、調査中の火災(4,861件)を考えますと、この件数は、もっと大きくなるのではないかと考えられます。

これらのことを背景として、このトラッキング現象による出火を未然に防止することのできるコンセントが有れば、火災原因の一つを消去することができる他、PL法等の対応も容易になると考えます。また、地域住民に対して行う防火座談会や各種事業所を対象として行う研修会等において、トラッキング現象を直接目で見ていただき、その怖さを知ってもらうことにより火災予防意識の高揚を図ろうと、広報用機器の研究開発も併せて行ったものです。

 

2 トラッキング現象の概念と現状(問題点)

電気コンセントにプラグが差し込まれているとプラグの差し刃には、常に100Vの電圧がかかっています。この状態で長期間放置されると、プラグとコンセントの間にほこりが付着し、このほこりが大気中の水分を吸収し放電が起こります。(図1)この状態が継続するとプラグ表面のプラスチックが徐々に焦げて炭化し、この炭化した部分に電気が流れプラグは次第に発熱し、時間の経過とともに発火します。トラッキング現象が起こりやすい場所として台所や洗面所などがあり、これらの場所には、冷蔵庫、換気扇、食器乾燥機、洗濯機など、プラグを差し込んだままの状態でいる電気製品が多くあります。また、これら機器コンセントは、直接水分が付着する可能性の

 

 

 

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