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により地形が改変されていることも予想され、古文書の文献調査、古来の地名の調査を行うことも考慮すべきである。特に、地震の場合は、そのサイクルが数百年単位であることも考えられるので、過去の発生事例の調査には十分な注意が必要である。

なお、地震防災対策地区別措置法により設置された地震調査研究推進本部(本部長:科学技術庁長官)は、平成9年8月「日本の地震活動」を発表し、全国各都道府県の地震活動の特徴を明らかにしている。

このような調査に加え、人口集中の度合い、土地利用の状況、危険物施設の配置等社会的条件を把握し、両者を結合しそれぞれの地域が災害との関連でどのような状況にあるのかを明らかにした「防災マップ」を作成し、住民にも十分認識してもらうことも必要であろう。

4 被害の想定

次に行うことは、これまで述べてきた情報を利用した、災害の種類・規模に即した被害の想定である。この被害の想定は、災害を未然に防止する措置を講じるために必要であるし、また、災害が発生した場合に、応急対策として、どの地域で、どのような措置を講じることが必要とされるのかをあらかじめ想定し、準備をしておくためにも必要である。

こうした被害想定は、地域防災計画により住民にも明らかにし、「自分達の地域は自分達が守る」ことの実践に活用してもらうことが重要である。

また、被害想定の実施には、地理情報システム(GIS)を利用して行うのが効果的である。GISとは、紙地図によって補完されてきた様々な地理情報を、統一的にコンピュータでデータベース化することにより、検索や表示、解析などを簡単に行えるようにするシステムであり、行政全般にわたる活用、さらには民間も利用することにより、社会の発展に役立つことが期待できる手法である。

5 防災まちづくりの実施

まちづくりには、先に述べたようにハードの対策、ソフトの対策が考えられるが、明確に区分できるものでもない。しかし、ここでは、基盤整備に係わるものをハードの対策、その他のものをソフトの対策と便宜上区分し、以下、ソフトの対策を中心に紹介する。

(1)ハードの対策

まず第一は、都市計画である。どの程度の人口規模の都市にするか、安全な箇所にどのように生活の場を配置するか、道路、ライフライン等の生活基盤の整備をいかにするか、すべて都市計画において決定することであり、災害に強いまちづくりが可能となるのである。しかし、我が国の都市は計画的に都市が形成されたのではなく、人が集まり住み、いわば自然発生的に形成されてきており、防災まちづくりも、現在の都市の姿を前提に、まちづくりを実施していかなければならない。なお、まちづくりに当たっては、消防機関も防災の観点から、積極的に意見を言う必要があり、このためにも都市計画審議会への参画を検討すべきであろう。

次に、施設等の整備に当たっては、消防庁舎や災害対策本部となるべき施設は災害の強いものとすべきであり、学校や公園も、災害時には避難所となることも予想され本来の目的以外に、避難所の機能も備えた整備がされるべきであるし、さらに、電気、ガス、上下水道等のライフラインについても災害により機能停止しないもの、機能停止した場合には早期復旧が可能な整備をすることが必要である。

(2)ソフトの対策

ア 情報の管理

まず、災害が発生前においては、災害が発生した場合の行動について、地域防災計画を住民に示すとともに、普段から実戦に即した防災訓練を実施することなどにより住民に十分周知しておくことが必要である。

次に、災害が発生した場合の情報管理であるが、災害の状況を正確に把握することにより、他の団体等の応援の必要性を判断し、また、応急対策を必要としている地域に適切に戦力を投入することが求められている。災害情報の把握手段としては、普段から情報網を形成すること、被害予測シミュレーションにより被害の概要を把握すること、また、高所監視カメラや、ヘリコプターに搭載したテレビカメラによる方法が

 

 

 

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