日本財団 図書館


夢を実現させた高齢者グループが共に暮らし合う家

東京が記録的な大雪に見舞われた翌朝、わが家の周囲も二〇センチ余りの積雪で覆われた。シルバー探検隊としての"記念すべき初取材!"というのに、前夜の影響で公共交通機関は大幅に混乱。不安を抱えながら、東京駅から外房線の特急に乗って一時間半。ところがナント取材地の勝浦(千葉県)は上天気。駅の周辺には雪のひとかけらも見えずに、菜の花さえ咲いていた。

「この温暖さは得難いですよ。それにこの周辺は日本で最も古い地層だとかで、地震の心配もまずありません」と、駅まで迎えに来てくれた秋山博之さんは自慢げに声をはずませた。

秋山さんは、これから伺う"グループホーム勝浦『田園生活館』"(以下、田園生活館)のオーナー兼代表者。児童福祉施設の職員を二七年間勤めたあと、転職して自力でグループホームを開設した人だ。土地購入、建物整備、運営費など開設に伴う資金はすべて自分の退職金と自宅売却費、銀行からの借金で賄った。

さて、駅から『田園生活館』までは車で一〇分ほど。取材に訪れたI子のために、遠回りして海岸線を走ってくれた。ここは入居者の健康管理を兼ねて、毎日のようにジョギングや散歩をするコースだという。陽射しは温かく、雄大に開けた海は本当にきれい。細くうねった岬の道では、散策を愉しむ数人とすれ違った。

 

018-1.gif

「田園生活館」の入口。ペンションと間違えて入ってくる人も多いというおしゃれな外観だ。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION