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1. ま え が き

 

わが国周辺海域で利用できる広域電波航法システムの概要については、昨年度の報告書に纏めてあるがその後、 1997年5月にはロランAがまた、9月にはオメガが廃止された。

この結果、我が国周辺海域で利用できる広域電波航法システムは、地上系ではわが国が運用するロランC(一部は韓国等と行っている国際協力チェーンがある)とデッカがあり、衛星系では米国国防総省が運用しているGPSとロシアが運用しているGLONASSがある。米国のロランCの運用については、米国連邦電波航法計画においては、衛星系システムであるGPSの整備に伴い、1994年版(1995年8月米国運輸省及び国防省が共同発行)では「GPSへの移行調整のために2000年までは電波航法の一要素として存続する見込みであるが、それ以降の継続運用については、ロランCの要件がGPSや他のシステムでは満たすことができないと評価されるかどうかできまる」としていた。このため我が国を含めてヨーロッパ諸国からもその後の米国の動向は注目されているところである。

 

?以下にあげる「ロランCに関する米国議会の状況」でも判るように米国議会聴聞会ではGPS/WAAS、特にFAAによるWAASの当初契約取消による他社との再契約、予算規模の急激な上昇、工期の大幅遅延等に関する議論が活発に行われている状況にある。

 

?この動向についての情報を会議に併せ収集したところ、米国では1997年の末頃からGPS/WAAS(Wide Area Augmentation System)のパック・アップ・オプションが米連邦航空局(FAA)で検討されており、1997年12月に行われたFAAの会議で最も経済的に補完できるオプションはロランCであることが結論付けられている。

 

以上のような展開からみて、米国運輸省及び国防省等が共同で実施している「2000年までは電波航法の一要素として存続する見込みである」としたロランCの将来計画はおそらく再度見直しされ、さらに延長されるであろうとの見方が一般的である。

 

ヨーロッパでは北西ヨーロッパ・ロランCシステム(NELS)が中心となってヨーロッパ委員会を通じEUと協議のうえヨーロッパ電波標識計画を進めている。NELSが1997年末に「ヨーロッパにおけるロランC整備とロランCを使用したディファレンシャルGPS即ちヨーロフィックス化に向け着実に計画を進めることを発表している。

 

この会議では、ロランCに関する各国の運用当局、その他の政府関係機関、利用者、関連企業、研究者などが広く集まり、有益な意見交換と優れた研究成果の発表がなされた。これらを一覧としてまとめた。

 

この度、日本船舶振興会の平成9年度補助事業として、これに出席の機会が得られたことは大変有意義であった。

 

 

 

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