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まえがき

 

21世紀を目前に控え、我々は地球規模での環境の維持改善が急務になっていると同時に、人口増大に対する食料・エネルギーの補給が困難になりつつあるという予測が高い確度で信じられてきている。エネルギー源を化石燃料に頼ることは環境と賦存量の両面で将来性は暗いと見ている。そこで21世紀のエネルギー源として、石油・石炭・原子力から、天然ガス、再生可能自然エネルギーへのシフトがとり得る最善策と考えられる。大規模集中型エネルギーから小規模分散型エネルギーへの転換である。

波浪エネルギーは再生可能自然エネルギーの中でも日本にとり有望な自然エネルギーである。また、波浪エネルギー利用技術は日本が世界に先駆けて灯浮標用電源として実用化したものである。そこで波浪エネルギーを灯浮標に利用するにとどまらず孤立した防波堤や岩礁等の灯台・灯標にも利用する流れは当然の帰結である。

本委員会は浮遊式波浪発電を利用し、沖防波堤灯台・灯標等への安定した電源を確保するための小型固定式波力発電システムの調査研究を目的として平成7年に発足した。

平成7年度には、日本周辺海域の波浪エネルギーの分布を調査し、灯標に波浪エネルギーを利用するに適した地点における波浪データならびに予想発電量の推定方法を調査した。平成8年度にはそれを受けて、沖防波堤上の灯台等に利用する小型固定式波力発電システムに適した空気室の設計法、安全装置を調査し、いくつかの事例解析を行った。

平成9年度は最終年度として、小型固定式波力発電システム用の模型を製作し水槽実験を行い設計用のデータを収集し、これらを基に小型固定式波力発電システムを設計するための指針を作成し3年間のとりまとめを行った。

これらの調査研究の成果が活用され、小型固定式波力発電システムを備えた灯標が一日も早く実現し、航路の安全に寄与するとともに、自然エネルギーを利用することにより地球環境にいささかなりとも貢献できることを切望する次第である。

おわりに本調査研究をまとめるにあたり、貴重なアドバイスを与えられた委員各位、ならびに波浪データの調査、水槽試験、指針作成に実質的に寄与された海上保安庁ならびに株式会社緑星社の関係各位に深甚の謝意を表します。

 

平成10年3月

財団法人 日本航路標識協会

「防波堤灯台等へ利用する小型波力発電システムの調査研究委員会」

委員長 前田 久明

 

 

 

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