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て、その頻度を停留時間別に分類しグラフ化する)等についてもとめた。

 

結果および考察

1. 歩行速度について

歩行速度は、高齢者で0.55±0.09m/s、若者で0.68±0.05m/sであった。一般に高齢者は若者に比べて歩行速度が遅いと報告されている3)。また、階段での歩行においても同様の結果が得られている4)。アイカメラを装着した今回の実験でもこれらのことが再確認された。

 

2. アイマークの分析結果と考察

1) アイマーク軌跡

注視点の移動軌跡を高齢者と若者のそれぞれ5名について比較した(図1)。この結果を見ると、個人差が大きいことが理解されるが若者の結果に比較すると高齢者の方が若干注視点の移動範囲、移動距離が小さかった。すなわち、若者の方が、広い範囲の視覚情報を得ながら歩行していた。

 

2) アイマーク時系列

アイマーク時系列は、時間の経過こ伴う上下方向(Y轍方向)および左右方向(X軸方向)の注視点の変動量がグラフで示されるものであるが、アイマーク軌跡の結集と同様の結果が得られた。すなわち、若者の方が一般的に注視点の移動範囲および移動距離が大きい傾向が示された。

 

3) 停留点軌跡

図2は、高齢者と若者の停留点軌跡の結果を比較したものである。アイマークが一定範囲(2.00度)に一定時間以上(100ms)停留したときこの範囲の中心を停留点と呼ぶ。円の半径が大きいほど停留時間が長いことを示す。X軸は水平方向への移動範囲を表し、Y軸は垂直方向の移動範囲を表す。単位は角度である。この結果からも、高齢者の方が注視点の移動範囲、移動距離が小さい傾向が伺える。

 

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4) 眼球最大移動面積

図3は、眼球最大移動面積を示したものである。これは、眼球がX軸方向、Y軸方向へ移動したそれぞれの最大値を掛け合わせて、面積を出したものである。それぞれ5名の値を平均化して比較すると、左側が高齢者2216±1388cm2、右側が若者の値であり3948±2342cm2である。0.1%水準で有意な差が認められた。すなわち、高齢者は、若者に比べて階段を繰りる際に眼球運動が少ない傾向が示された。このことは、視覚情報を得る範囲が比較的狭いということを示唆するものである。しかしながら、例数が少ないことと、個人差が大きいことなどを考慮し結論を示すにはまだ多くの調査が必要であろう。

 

5) 累積停留時間分布(頻度)

図4は、累積停留時間の頻度を各被検者でその結果を示したものである。図4に示された個人の値の結果の図はすべて、横軸が停留時間ごとの頻度(%)を示したものであり、縦軸は停留時間(秒)を示したものである。すなわち、停留時間は、縦軸の最下部が0.000秒から最上部が5.000秒で、0.250秒の区切りとなって示されている。この結果からは、高齢者の方は、短い停留時間の頻度がある一方で、比較的長い停留時間を示す場合もあることが示された。すなわち、高齢者では、一般に停留時間の長い要素が含まれる傾向のあることが理解できよう。これらの結果をもとに、高齢者及び若者の5名の被検者の値をまとめて示したのが、図5である。

 

 

 

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