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を1足長に広げ、軽い膝屈曲位で体前傾姿勢の歩行がみられた。しかし、歩行習得3ヵ月頃では外軽挙上されていた上肢が幾分下ろされ1足長以下にbaseも狭められ、体前傾で離床期前半、大腿を挙上し前進する幼児特有の歩行様式を示した。

筋電図においても歩行習得3ヵ月頃では接床期の着地から踵押し上げ(push off)の間、抗重力筋である腓腹筋、大腿二頭筋、大殿筋に強い持続放電がみられた。また着地前、成人にみられる足背屈筋の前脛骨筋に集中した強い放電(burst)がみられず、上体前傾ですり足(足底全面着地)的な幼児特有の歩行パターンを示し始めた5,6,8,9,12)。3歳頃になると接床期前半の腓腹筋の放電が減少・消失し、接床期後半、踵の強いpush offのため腓腹筋に強いburstが認められ、また着地直前では、足背屈筋の前脛骨筋に強いburstがみられ、強い足背屈で踵着地がなされる成人型歩行パターンを示し始めた1,5,6,8,9,12)。しかし、独立歩行開始期の下肢筋の筋電図パターンは、成人歩行の筋電図パターンと比べると過剰な筋活動がみられ、バリエーションも認められた3,5,9)これは、独立歩行開始期はOkamotoが5,9)、Thelen17)らが指摘しているように、乳児は筋力・バランスが未発達で、それらを補償するため過剰で特有な筋放電を示したものと考えられる。

前回は独立歩行初期(独立歩行開始から歩行習得4〜5ヵ月頃)の特徴を詳細に把握するため、足関節筋(前脛骨筋、腓腹筋)について筋電図記録し検討した用。その結果、成人歩行にはみられない接床期の前脛骨筋の強いburstや、離床期後半の腓腹筋の強い放電様相より、歩行習得1ヵ月以内は非常に不安定な歩行期、歩行習得2〜3ヵ月頃から少し安定した歩行期へ移行し始めることが推定出来た。今回は、最も不安定な独立歩行開始期(独立歩行獲得初期)に焦点を絞り、足関節筋だけでなく歩行に関与する膝・股関節筋(内側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋、大殿筋)を含めて、独立歩行開始期の特徴を筋の作用機序の面から検討した。

 

研究方法

被験者は生後306日目の乳児(女児)1名が独立歩行を開始し、その後幼児型歩行を獲得し始めると考えられる歩行習得3ヵ月頃まで2〜4週間隔で、縦断的に筋電図を記録した。

筋電図は、直径5mm皿状電極を使用し、通常の皮膚表面誘導法(感度:12mm/0.5mv、時定数0.003msec、紙送り速度60mm/sec)で記録した。被験筋は、右脚の下肢筋から、足・膝・股関節筋の歩行に関与する代表的な6筋(前脛骨筋、腓腹筋、内側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋、大殿筋)を従来の歩行の筋電図的解析結果から選択した。アーティファクト(人工的電気変動)の混入を防ぐため、該当筋に添付された2個の電極間の皮膚抵抗が5KΩ以下になるよう0kamotoら10)の方法を用いた。

動作は、ビデオカメラでフレームシグナル(60コマ/秒)を筋電図記録紙に同時記録した。離床期・接床期を区分するため靴裏にフットコンタクトスイッチを用いバソグラムや、下肢の各関節にゴニオメーターを添付しゴニオグラム(角度変化曲線)を筋電図と同時記録した。

得られた動作筋電図記録は歩行の発達の筋電図的解析結果を参照5〜9,14)しながら検討を加えた。

 

研究結果

独立歩行開始期の筋電図パターン

図1、図2は歩行習得1日目(生後306日目)、図3は歩行習得2週頃(生後318日目)、図4は歩行習得1ヵ月頃(生後335日目)の代表的な筋電図を示している。

 

1. 歩行習得1日目(生後306日目)

1) 立位から3歩成功

図1は独立歩行習得1日目で、3歩成功したときの代表的な筋電図である。

図(左)は立位保持(standing)から踵押し上げ(push off)時と離床期(swing phase:SW-1)、図(中)は接床期(stancephase:ST-1)、図(右)は転倒前の離床期(SW-2)と両足立位保持期(ST-2)の筋電図を示している。

図(左)にみられるように、push off前の立位

 

 

 

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