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感染者の血液が混じらないようにしているわけですが,なかにはウインドウ・ピアリアドといって,感染のごく早期ではHIVの抗体が検出されないので,そういう時期のHIV感染者の血液が混ざっていた場合は,感染を起こすことがあるわけです。これはたいへんまれなことですが,本邦で先日このような時期のHIVの混じった血液の輸血による感染例が報道されて問題になりました。ですから,いかにスクリーニングを徹底して,感染早期の段階のHIVをいかに早く確実にとらえるかということがたいへん大切なことで,そのための新しい検査法の開発への努力がなされています。凝固因子製剤については現在は加熱処理が行われているので,まず問題はありません。

それからAIDSのリスクグループの人々と性交渉のあった人も当然リスクがあります。感染者の母親から生まれた子供も当然そうです。最近は異性間性行為による感染例が米国でも日本でも,諸外国でも増えてきています。

 

8.HIVの感染経路

AIDSウイルスは血液と体液,とくに精液と膣の頸管粘液の中に多く含まれます。ですから感染経路としては血液を介する経路と性交渉による経路とがあるわけです。それから母子感染です。血液を介する伝播としては,血液で汚染された注射器を使った麻薬の静注によって感染を起こすことがあります。感染率は0.5〜10%といわれています。汚染された血液の輸血では感染率は90%以上でかなり高率になります。

それから医療従事者の針刺し事故による感染ですが,米国では40例余りの報告例があります。全体の針刺し事故の件数からすると,感染率は低く,0.3〜0.4%といわれています。つまり,1,000人針刺し事故を起こして3人くらいという頻度であり,B型肝炎ウイルスが30〜60%,

 

 

 

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