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カンピロバクターの下痢を起こした人がみなこれになるのかと心配する必要はありません。

 

4)黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌は毒素型食中毒を起こします。この菌は手の指などの皮膚軟部組織に化膿を起こしたりします。黄色ブドウ球菌の中には,吐き気や下痢を起こすエンテロトキシンという毒素を持っているタイプの菌があるわけです。そのような黄色ブドウ球菌およびその毒素で汚染された食物を食べることによって胃腸炎を起こすことがあります。調理士の手が黄色ブドウ球菌の感染で化膿したりしている場合には,食物の汚染の危険性が高くなります。この毒素であるエンテロトキシンは熱に強く,100℃以上の加熱にも耐えるので,加熱しても予防できないことが多いです。潜伏期は2〜4時間で,食べてから2時間か4時間後に,急性胃腸炎の症状,すなわち吐き気,嘔吐,腹痛,下痢の症状を呈します。発熱はあまり見られません。治りもよく,大体1日で治ります。抗菌剤はとくにいりません。これは予防が大切で,手の指などに傷があったり化膿をしている人は調理をしないことです。

 

5)ウェルシュ菌

ウェルシュ菌は人や動物の消化管内や土の中にいる菌で,土や消化管内の内容物や汚染された食物等を介して感染することがあります。これは嫌気性菌の一つで,酸素がないところでむしろ増殖する菌です。耐熱性の時期があって,ある程度加熱しても生き残っている場合があります。調理したあとに汚染のある食物を長く室温放置したりすると,リスクが出てくる可能性があります。先日,千葉県のある精神発達遅滞の人々のいる施設で下痢の患者が12人出現し,この菌が検出されたそうです。

 

 

 

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