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健康とは−
今日、健康の概念は大きく変わってきました。従来のWHO(世界保健機関)の健康の定義は、「肉体的、心理・精神的、そして社会的に健全な状態」とありますが、高齢化社会を迎えた今日、それらのどの要因を取り上げてみても十分に満足できる状態にあるとはいえません。
著名なアメリカの細菌学者であったデイユボスは健康について次のように述べています。「それぞれの人の住んでいる環境の中で、永遠に続く内的環境と外的環境の変動の中で、上手に適合できる状態を健康と考える」。これを受けて、同じくアメリカの社会学者であるアン・ソマーズは、「変化していく内的・外的環境に適合できない状態において健康が損なわれ、このような適合の破綻は好ましくない生活習慣によってもたらされる」と述べています。
それでは好ましくない習慣とは何かを考える前に、心臓病の知識をまとめておきましょう。

心臓病のいろいろ
最近の統計でもわが国の平均寿命は依然世界一で、高年者の人口が著しく増しています。したがって疾病の種類も悪性腫瘍や動脈硬化によるものがほとんどで、とくに後者はいわゆる心臓病と脳血管障害で特徴づけられます。
このような疾病構造は今後当分続くと思われます。
それでは心臓病に的を絞ってみましょう。もっとも多いのが心臓を養っている冠状動脈の動脈硬化で起こる狭心症、心筋梗塞、そして、急死といった病態です。
その他、全身の老化の現れとして心臓にも老化の現象が見られます。多いものとしては弁の硬化や石灰化による狭窄や弁逆流などがあり、また、長年続いた高血圧が、高年にいたって心臓のポンプ機能を阻害する心不全などが挙げられます。

予防できる心臓病
動脈硬化や高血圧は多くの人に共通してみられる健康障害であり、これらの病気の芽はすでに小児期にあって、その進行や憎悪、そして疾病としての発症は生活習慣と密接な関連があることはよく知られており、また予防が可能なことは実証ずみです。
これら疾病の発症に関わる要因を危険因子と呼びますが、まず年をとること、男であること、そして、心筋梗塞や急死の家族歴などは避けることのできない危険因子です。しかし、高血圧、喫煙、高脂血症は重要な三大危険因子であり、その他、肥満、糖代謝異常、ストレス、ある種の行動パターン、運動不足などは変えることのできる危険因子です。
これらの危険因子は生活習慣と密接な関連があり、食べたり、飲んだり、吸ったりする好ましくない日常の生活習慣の積み重ねで血圧が上がり、動脈硬化が進行していくのです。

 

 

 

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