は じ め に
わが国における国際化の進展は著しく、また、国際社会におけるわが国の社会的、経済的地位の向上に伴い、わが国の果たすべき責務も拡大している。
その責務を果たすべく、発展段階にある諸外国への経済的な支援はもとより、それら諸国の政府職員等を研修員として受け入れる等、人材育成・知的支援にも積極的に努めてきており、そうした支援への期待は一層高まってきている情勢にある。なかでも開発途上国及び市場経済化を図る国々における経済社会の発展を支える行政の効果的・効率的な運営に対する寄与が期待されている。
このような状況の下、開発途上国等の行政水準の向上には、公務の果たすべき役割、行政サービスの在り方などのマクロ的視点に加え、行政に携わる公務員の資質の向上が不可欠であるところ、接遇、汚職防止をはじめとする倫理高揚、部下の育成、仕事の管理などミクロ的視点からも考慮する必要がある。
本調査研究は、このような視点から、今後わが国との関係が緊密化するものと期待される東欧並びに市場経済化を展開している東南アジアの諸国における公務の実態及び問題点等の調査研究を行い、途上国政府職員等の人材育成に関する研修プログラムの開発を目的として3か年計画で実施しているものである。
今回はその2年目に当たり、中華人民共和国、ヴィエトナム社会主義共和国及びシンガポール共和国の3か国についての実情を調査した。中華人民共和国とヴィエトナム社会主義共和国については、これまで公務員制度に関する資料が乏しいため、これら諸国の基本的な情報、資料などの収集を主眼として、また、シンガポール共和国については、既存の公務員制度関係資料を基に、今回は特に汚職取締の状況と公務員大学校での最新の研修プログラムなどの情報収集を主眼として、それぞれの制度、業務を担当する対象国省庁の担当者との面談により行った。本報告書は、その結果を取りまとめたものである。基本的には、公務員制度及び人材育成について記述した。項目によっては資料の入手が困難なものもあり、上記3か国の間で記述項目に若干の異同が生ずることとなったことをご容赦いただきたい。
この調査研究は、財団法人日本船舶振興会(日本財団)の補助事業として実施されたものであり、同財団の援助に対してここに深甚な謝意を表する次第である。