2. 第2次改造. 修理工事
予備観測は幸いにも大きな成果を収めたが, 他方では種々問題点が明らかとなった。その対策の実施は本船帰国後では間に合わないので, 永田武観測隊長と山本順一「宗谷」航海長が途中ケープタウンより空路帰国した。松本満次「宗谷」船長の要望の第一は帰路2週間密群氷の中で立往生したことから, 本船の砕氷能力を是非増やして欲しいというものであった。そこでプロペラ・ピッチを小さくして40tであった推力を48tに増やすことにした。このため船速が1ノット遅くなった。
また, 南極観測は片道2ケ月半を要する長期航海であり, 限られた船体に人員と資材を満載して熱帯地域を通るので, 隊員や乗組員の疲労が非常に大きく, その上復原力が大きい砕氷船の常として横揺れが激しいため, 特に航海に慣れない観測隊員は船酔いに苦しんだ。そこで, 予備観測では他国の砕氷船同様ビルジキール(揺れ止め)を付けなかったが, 本観測ではこれを取付けることにした。そして往路の航海では揺れ止めとして働き(横揺角4割減を見込む)南極の氷海で氷塊に当ると外板に沿う形に折れ曲がる板厚とし, 両舷4個ずつのビルジキールとした。輸送貨物量は予備観測では400tであったが, 本観測では500tに増えたため, 船首楼甲板と船橋楼甲板とをつないで生じたスペースのうち, 前部を貨物船に後部を科員居住区(予備観測のとき後部下甲板にあった)とした。後部下甲板の元科員居住区を冷凍庫と第4船槍に改めた。このため船胎容積は2割5分増え, 冷蔵庫は冷凍庫(零下18℃)2室を含め5室となり容積も2.5倍に増えた。冷凍機は7.5馬力3台であったが, 新たに30馬力2台を増設した。これで冷蔵庫容積不足のため往路の途中食糧にかびが生えた問題は解決した。
前甲板に積む航空機がセスナ機から大型ビーバー機に替わったので, 前部マストを門型マストに改造し, 前部甲板へ揚収し易くした。また, 給気通風系統の給気量を3割増しとし,排気通風機を新設して上甲板諸室, 科員室および通路の換気通風を改善した。観測隊員食堂にルームクーラー2台を設けた。予備観測時に設けた電離層観測室と宇宙観測室は廃止されて, 重力測定室と海洋観測室が設けられた。海洋観測及び極地航海のため1万mの極深海用音響測深儀をソナー室に装備した。送信機出力増大および船内交流電源不足のため15KVA電動交流発電機1基を増設した。
第1次航海を終わった「宗谷」の船体, 機関を調査した所, 損傷箇所は船底外板にわずかなくぼみが生じただけであったが, 右舷推進軸がプロペラ嵌合部で0.3mm曲がっていることが分り,