6. 「極地航海保安部署・配置に就け」
氷海に進入、砕氷前進を開始する際に掛かる号令です。乗組員の1/2が配置に就き、6時間当直に入ります。この部署の発令される状況は千差万別で、氷縁からアイスパックを蹴散らしながら入る場合もありますが、氷の量(船を中心にした視界内の水の量を1/10〜10/10で表します)が増え、形も大きくなり氷量7/10位になると、スイスイ砕氷なんて夢の又夢で、何十回、何百回と前進・後進を繰り返し氷に激突する根気仕事となります。段々前進距離も少なくなります。後ろに下がれる海面も徐々に狭まり、舵の効きも悪くなり自由を失ってきます。水の質・形・大きさ等により火薬(TNT火薬)を使用して砕氷する「爆破用意」が発令され爆破が実施されます。また気象等の変化を待つべきだと判断された場合は待機に入り、必要要員のみを残し、次の氷との闘いに備え休養をとらせます。
砕氷行動はこの様に、唯、激突の反復と爆破だけではなく、両舷のバルジに注排水し、船体をローリングさせ水圧を除去するとか、前甲板にジブを展張し、風の力を利用して方向変換をはかるとか、又屹立している堅固な氷塊にワイヤーを取り、前後部のウインドラスで巻きながら方向変換を行うとか、船首で砕氷し舷側にへばりついた氷板やブラッシュアイスを、竹竿や棒等で船尾方向へ除去する所謂竹槍部隊なるものまで、ありとあらゆる物・方法を駆使して氷へ挑んだ訳です。一度結氷した氷が、うねり・波・風等で破壊され重なり、所謂密群氷となると、海面上に5m〜6mと盛り上がり、しかも延々と見晴るかす果てまで続く状態となると、最早、運を天に任し、気象の好転を待つしかありません。完全にビセットされ待機中、時間の経過により現れた爆破の効果での氷の緩み、また風の急変(南風)による氷の緩み等予期せぬ状況が現れると、直ちに「極地航海保安部署に就け」の号令がかけられ、氷縁から氷に突入する時とは一味も二味も違った気迫で、このチャンス逃すものかと武者震いして氷に挑んでいったものです。
そんな時つくづく思いました、「力の強い船が欲しい…」と。
「オビ」とは2回、「バートンアイランド」とは1回、氷海で行動を一緒にしましたが、それ