統一朝鮮にしても、アメリカと同盟さえもっていれば安定しますから。
そうしますと、それからもう1つ先の論理の展開として、それならどうして日本と協力しないのだという議論も既に出てきております。ですから、これはつくるべきでないといっても、もし韓国が一緒にならないかといってきた場合に日本はどうするかという問題は将来生じてくると思います。そうなった場合の日韓関係を考えますと、日韓間で協力することの障害となっているのは、韓国がいいと言っている以上、もはや韓国の対日感情ではないのです。その場合は何が一番の問題かといいますと、今度は日本自身の政策です。これは集団的自衛権を行使しないという建前をとっておりますと、とにかく何をいわれても、これもできない、あれもできないということで、では協力する、協力は結構だ、日本も協力しましょうというけれども、協力して出すものが何もないのです。出すメニューが何もないのです。それがない限りは協力ということはあり得ないので、それが潜在的には東南アジア諸国との間にもあるのです。
私はタイの大使をしておりましたときに、タイの総理大臣がとにかく南シナ海に中国が出てきて困る。だから日タイで海軍演習をやろうともちかけられました。それは正式な会談でも言っております。しかし日本はこれにこたえるすべはないのです。全部だめです。つまり、東南アジア諸国と安保対話をしようと言ったのは日本ですけれども、日本が全部だめというなら、安保対話はいいですが、結果どうするのというと、日本は何もできませんということになってくる。結局、将来、日本がアジアとの協力ということになりますと、やはりその辺がどうしても日本にとって中心的な問題になると思います。向こうにとっては中心的でも何でもないのです。日本と協力したいというけれども、日本はとにかくだめなものはだめなのだといっているだけの話でありまして、どこまでいいとも余り言ってくれない。そういう状況ではないかと思います。
ですから、私は、むしろ日本が集団的自衛権行使の問題を解決しますと、この範囲ならしてくれと、つまり、インドネシアの掃海艇の訓練ぐらいしてくれ、掃海艇ぐらい売ってくれという話にもどんどん乗れるわけです。その場合は、アジアにおける自主的な同盟というか、軍事的な協力関係というものは、余地があると思っています。
端的に申しまして、それの最大の障害が日本の政策であります。
○モデレーター 将来、仮定の問題として韓国から日米韓同盟条約というものを提案されたらどうするかという問題、確かに、日米内では5条と6条のバランスがとれているから1つの形が整っていますが、韓国とはどういうバランスをとるかという問題が出てくるでしょうね。
もう1つ、田中さんが、第1圏と第3圏との関係において国連の役割をいっておられるのですが、果たして、第1圏内部において国連はどういう役割を果たせるのですか、果たし得ないのでしょうか。その点、何か意見を聞かせていただけませんか。
○田中 国連機関はいっぱいありますから、その国連機関の中で第1圏の内部に関係する部分というのは当然あると思います。ただ、国連の設立されたときの最重要機能は、やはり安全保障理事会の機能です。そうなりますと、国連が先進民主主義諸国の中で果たすという役割は、実質的にはほとんどないと思います。常任理事国という制度が先進民主主義諸国と今でいうと第2圏域との対話とかに役立つということはあるし、第1圏域内部の政治といいましょうか、日米欧の間の政治の場として安保理事会というものがあると思いますけれども、私は現在の安全保障関係でいうと、基本的には国際連合の一番の最大の機能は、私のいう第3圏の秩序崩壊地域に対する役割だし、あとは第2圏内の国家間紛争の監視といいましょうか、そういうものを防ぐということです。第2圏内の大国同士は、国連は余り大した機能は果たせないと私は思っています。