ですから、これはマックピースといったらいいのでしょうか、マック・ピース・セオリーですけれども、ややおかしい話でありまして、ですから、デモクラティックピースもこれとやや似たようなところがあります。
私は、佐藤先生の意見とかなり似ているわけですけれども、民主主義諸国の中で先進というようにくっついている部分は、単に民主主義ではないのです。ですから、経済的な相互依存関係も非常に深く結びついているし、それ以外の人的交流といったものも非常に結びついている。そういうさまざまな複合した要因によって、今の先進民主主義諸国というのはお互い戦争しないというような状況になりつつあるのだと思います。
ですから、民主主義だといっても、まだなったばかりというのはなかなか危ない。事象的にいうと、なったばかりの民主主義国はかえって戦争しやすいということという人もいます。
特に問題は、やはり、戦争は民主主義国であるうちはしないかもしれませんけれども、民主主義国をやめて戦争するかもしれないわけです。民主的に民主主義国をやめてしまう国というのはあり得ますから。そうすると、相手が民主主義国だから絶対戦争にならないのだといって安心するわけにはいかない。やはり、民主主義の制度やその他がいろいろ複合的に絡まり合っているというところが、特に今のOECD加盟諸国の特徴だろうと思っています。
それから1点だけ申し上げます。先ほど佐藤先生がおっしゃられた、先進民主主義国は内部的に大変問題だということは、私もそう思っています。ですから、ここで今起こっているのは、エモーショナリズムもそうですし、それから、とにかく軍事に関してはかかわり合いたくないという傾向がどんどん強くなっていると思うのです。我が国は、ずっとそのように思っていた人たちばかりですから、ほとんど驚くべきことはありません。ただ、やや心配なのはヨーロッパ諸国も同じようになってきている。そこで、先ほどアメリカは厄介な国だとおっしゃられたわけですが、アメリカは最もナショナリスティックで、ユニバーサリスティックなわけで、私はやや逆説的ですが、アメリカまでこのナショナリズムが弱くなって、ユニバーサリズムがなくなったら一体どうなってしまうのだろうという感じがするわけです。アメリカにはまだまだ相当ナショナリスティックで、ユニバーサリスティックでいてもらわないとかなり危ないという感じがしています。
ですから、やや本質的にいうと、私は自分の説で、先進民主主義諸国の内部で、国家が相対化している、国家でないアクターが非常に出てきているということを言っています。現象としては、そういう傾向がどんどん強まると思うのです。ただ、ここで、私のいう第2圏域というものが存在するということ、それから混沌圏も当面はあるということから考えれば、やはり、先進民主主義諸国にとって、ある種のコミュニティーを再建する必要があるし、それから制度としての国家というものに対する見方というものをもう一回真剣に見直さなければいけない。国家の最低限というか、一番重要な機能である安全保障機能、治安維持機能というようなものに関して、かなり明確な再定義というものをしていかないと、内部的にもテロだとか犯罪だとか、いろいろな問題が起きるし、外部的にも非常に問題が出てくるのだろうと思うのです。