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第2部 調査結果の分析

 

?T 就業・雇用数の動向

経済企画庁がそれまでの楽観的な景気見通しの文言を改めたように我が国の経済情勢は厳しさを増し、雇用に関する指標も改善されることなく、完全失業率は史上最悪といわれる3.5%に張りついたままである。この調査の調査時点は平成9年10月なので、その時までの状況しか反映されないが、いつの時代にも雇用は国にとって最大の関心事なので引き続いて今年も就業・雇用の動向について調査することにしたものである。

1.常用雇用者数の増減状況

(1) 過去1年間の常用雇用者数の増減状況〔第27・28表参照〕

常用雇用者の一般的な動向を示す毎月勤労統計の「常用雇用指数(製造業・事業所規模30人以上)」では、平成7年を100として平成9年8月では97.8となっており、「有効求人倍率(除新学卒・季節調整済み)」も同年9月で0.71倍といずれの指標も雇用情勢の厳しいことを裏づけている。

当研究所の調査では、過去1年の間に常用雇用者数を「減らした」企業の割合は57.5%で昨年調査の58.1%とほぼ同じ割合となっている。一方、「増やした」とする企業は9.7%と前回の8.8%より約1ポイント増えている。また、常用雇用者数は「おおむね変わらない」と答えた企業は32.8%(昨年33.1%)で大きな変化はなかった。なお、この結果を企業規模別、産業別にみてみると次のようになっている。

ア.企業規模別

過去1年間に常用雇用者数を「減らした」と回答した企業は、「5千人以上」では67%(昨年調査68%)、「1・2千人台」58%(同58%)と前年調査とほとんどかわっていないが、「3・4千人台」では56%(同69%)とかなり減っている。しかし、いずれも半数以上の企業が削減を続けていることが分かる。これに対し、「千人未満」の企業は一昨年、昨年と常用雇用者を「減らした」企業が40%程度であったものが本年調査ではこれが一挙に51%と大幅に増加している。

また逆に「増やした」と回答した企業は、「3・4千人台」が昨年と同様1割を超え15%(昨年11%)で、他の規模の「増やした」の割合は昨年より僅かながら増えるか横這いとなっている。次に雇用者数は「おおむね変わらない」つまり現状維持と回答した企業は、「3・4千人台」が30%で昨年の20%から10ポイント増え、一方、「千人未満」が41%(昨年51%)で逆に10ポイント減少している。あとの規模は2〜3割で数値的にも昨年と変わらない結果となった。

イ.産業別

産業別にみて、「減らした」割合の高い産業は「運輸・通信業」の72%(昨年56%)と「金融・保険業、不動産業」の76%でこの産業は昨年も72%の企業が削減を実施しており、企業の合従連合と不良債権の処理やいわゆる金融ビッグ・バンヘの対応など経営安定のため従業員の削減に努力している様子がうかがえる。その他では「卸売・小売業、飲食店」が43%で昨年の62%

 

 

 

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