危険な天使たち(P77)を参照
朱延平
チュー・イェンピン
監督
解説
商業映画のベテラン監督朱延平が、久々に渾身の気合を込めて打ち出したシリアス大作。ジャッキー・チェン、アンディ・ラウら超豪華キャストが売りだった前作の『炎の大捜査線』と同じ監獄を舞台としているが、話は全く別で、むしろ林嶺東監督の『プリズン・オン・ファイアー』を思い出させるダークな殺気が漂う。主演の一人呉奇隆が見事なアクションを見せてアイドルイメージを覆す善戦ぶり。ワキを固める香港・台湾の個性派の顔ぶれも良い。そして、不条理が一つ一つ積み重なって爆発的なクライマックスへ収斂していく、あらかじめカタルシスが約束された展開は奇をてらうことなく職人芸的である。台湾で現在この種の豪快な娯楽作を作れるのは朱延平をおいていないのであり、その存在の重要性を改めてはっきり認識させてくれる。
物語
「火焼島」と異名をとる台湾の孤島に設置された恐怖の刑務所。そこへ2人の青年が入って来た。一人は、妻子との安穏な生活を夢見て、狡猾な興業主ユンの裏をかき高飛びしようとして失敗したボクサーのリン。もう一人は不注意から同僚を死なせ、自分を陥れた裏切り者を憤怒のあまり射殺してしまった元刑事ヤン。所内には小心者の相場師ダー、麻薬組織の黒幕パオ、パオに恨みを抱くユン、アル中のリャンら様々な受刑者から、不気味なまでに人格者ぶった所長と腰巾着の看守まで一筋縄ではいかない者ばかり。金次第でどんな不正も横行し、絶えず凶々しい事件の起こる腐敗しきった世界で、リンは脱獄のことだけを考え、ヤンは忍耐を重ねて出所の日を待つ。だがリンは脱獄に失敗して連れ戻され、ヤンは所長の罠にかかって集団リンチを受け正気を失う。彼らは生きて監獄の外に戻れるのか。
(浦川)