海をみつめる日(P50)参照
王童
ワン・トン
監督
解説
王童監督が、2年間温めた企画を、760万元という低予算と短い日程の中で撮り上げた喜劇。以後、王童監督が発表していく郷土映画の第1作。それまでタブーに近かった日本統治時代を描くことができたのは、この年、38年に及ぶ戒厳令が解除されたこととも無縁ではない。戦争、日本人の支配、台湾人どうしの矛盾(農民と地主、台湾人巡査など)といったテーマを盛り込みながら、それをもギャグにし、全体には快調なテンポのドタバタコメディに仕上がっている。また、戦時下の日常をのびのび生きる子どもたちが、作品によりいっそうの明るさを与えている。
物語
太平洋戦争期の農村に貧しい兄弟がいた。彼らは年老いた母と気のふれた妹、大勢の子どもたちをかかえて、何とか軍隊行きをごまかしながら暮らしている。そこへ地主まで疎開してきて、大判振る舞いの魚料理でもてなすはめに。指を食わえて見ている子どもたち。そんなある日、村が爆撃を受けた。敵機が去ると兄弟の畑には大きな不発弾が。巡査は、この爆弾を天皇陛下に献上すれば出世間違いなしと、兄弟とともに爆弾を上官に届けるため町に出かける。いつ爆発するかわからない爆弾を運んで、三人はようやく町までたどりつくが、日本人の上官は恐れをなし、すぐ海に捨てろと命ずる。兄弟はしぶしぶ爆弾を海に投棄。その途端、大爆発が起きる。この爆発で大量の魚が浮かび上がり、兄弟も巡査も我を忘れて魚を拾う。期待していたご褒美には有りつけなかったが、思わぬ魚の大収穫に、家族は大喜びであった。
(加藤)