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字幕付きの『クリスマス・キャロル』を観て
太田晴康

耳の聞こえの不自由な人たちに、話し言葉を聞きながらその場で書いて伝える「要約筆記」活動を行っています。そのことが縁となって、昨年、初めて字幕付きの『クリスマス・キャロル』を拝見しました。大変感心したのは、舞台の進行に巧みに合わせた表示方法で、何気なく出る字幕のタイミングの良さにプロの技を感じました。
芝居を字幕付きで楽しみたいという声は、要約筆記の利用者からしばしば寄せられます。ところが、ほとんどの公演は、音が聞こえている観客のみを対象にしています。それだけに、三百人劇場の『クリスマス・キャロル』は画期的な公演と思います。 実際、昨年の公演を見た利用者の方々からは、字幕を通じて舞台を共有し、ほかの観客とともに共感することができたという感想をいただきました。その一部を紹介します。
「難聴になってから十年位になります。以前はミュージカルなどよく見に行きましたのに難聴になってからは全く行っていませんでした。久々にお芝居を見て、内容もよくわかり、舞台と一体になって楽しむことができました」
「今日は素晴らしい劇を鑑賞することが出来ました。字幕付き公演など、七、八年前に機器展に出掛けた時、こういうのが出来たら良いなと考えていたことが研究され、どんどん実現していくことはうれしいです。今回だけでなく歌舞伎、宝塚などもと欲張っております」
「芝居をこんなに身近に楽しむことが出来るなんて夢のようです。なんといったってセリフが分かるということが一番うれしい。みんなと一緒に楽しむことが出来たという満足感で胸がいっぱいでした。ありがとうございました。クリスマスのプレゼントをいただいた気分で帰宅しました」
要約筆記活動に携わる者として、字幕付き芝居が当たり前と感じられるような舞台環境の実現を心から願っています。その意味ではクリスマスといわず、ぜひ全公演に字幕を付けていただければ幸いです。
(東京都登録要約筆記者)

 

 

 

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