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?U. 昔と今、そしてこれからの里山

里山に人の手が入らなければ、より自然な環境へと戻っていくのだから結構なことではないか…という考え方もあります。

しかし、先の章で述べたように日本の農耕文化とともにあった里山が多種多様な生き物にとってなくてはならない環境であり私たち人間にとってかけがえのない身近な自然であるという厳然とした事実があります。

 

1. 変わり行く里山。

里山が活用されなくなった第一の原因は、1960年頃から急速に普及し始めたプロパンガスや都市ガス、そして石油や電力などへのエネルギー源の転換によって、マキや炭などの木質燃料が使われなくなったこと、第二に農業における化学肥料と農薬の使用によって有機肥料が使われなくなり、落ち葉掻きや下草刈りなどをしなくなったこと、第三に家庭用品や農具などに木材、竹といった天然材を使用しなくなり、プラスチック、合成樹脂、金属器具が使われるようになったことなどが大きな要因と考えられます。

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さらに、高度経済成長政策による労働者の都市への集中と、都市の拡大による田畑の宅地化が進み、農用林が不用となったこと、農業の集約化、産品の単一化がはかられ農業の機械化・企業化が進んだこと、「米」の生産過剰による休耕田や転作補助金政策によって営農意欲を減退させたこと、農業従事者の減少と高齢化が進んだこと、そして拡大造林による林業政策の失敗などが上げられます。

 

 

 

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