第3章 防災関係資料のデジタル化手法の現状及び課題
前章で防災関係資料のデジタル化の実態を考察した。これまでは,資料のデジタル化は全体としてあまり進展しておらず,デジタル化を行う場合も,パソコン上でデータを直接入力することにより時間と労力を投入することが多いのが実情であったが,これからの技術はどのようになっていくのであろうか。
本調査研究において,防災関係資料をデジタル化する手法は,基本的に紙媒体のデータ(印刷された文字・図形・地図・写真等のデータ)をデジタル化する方法とワープロ化文書等の電子媒体を活用する方法の2つに大別する。
ここで,防災関係資料のデジタル化の流れを以下に示す。
紙媒体のデータをデジタル化する方法については,各々のデータの属性(文字・図形・地図・写真等)に応じて,OCR変換,ワープロや画像処理ソフトによる直接入力,音声入力などの方法がある。
一方,ワープロ化文書等の電子媒体は,基本的に既にデジタル化されたデータとみなせる。この方法による文書は今後益々増えていくため,全体としてデジタル化された防災関係資料が増える傾向にあるものと思われる。
しかしながら,文書作成ソフトは多くの種類があり,これらは必ずしも互換性がないため,これらのデータの活用にあたっては,どの程度データ変換が可能かが問題となるため,これらの課題を将来にわたってどの程度クリアできるか検討しておく必要がある。
以下,3.1で紙媒体について,3.2で電子媒体について,各々のデータの属性や保持形態,処理過程に応じたデジタル化の手法の現状及び課題を整理・検討する。さらに,3.3でデジタル化した防災関係資料の保存(記憶),印刷,出力,発信に関する方法について整理する。
3.1 紙媒体のデータのデジタル化手法
紙媒体のデータをデジタル化する方法は,文字,図表(フローチャート,一覧表等),画像(イラスト・写真・地図等)のデータ属性に応じたデジタル化手法があり,それぞれにおいてクリアすべき課題が異なる。
これまでの防災関係資料のデータ作成方法をみると,パソコン上でキーボードやマウス等を用いた直接入力が主流であった。データ入力の作業量が大量になると,データ作成効率のよいワープロソフトや画像データ処理ソフト等を選択し,専門の入力オペレータに依頼して入力することが多い。
一方,OCRや音声変換システムについても,近年ようやく実用化段階に入りつつあるものと思われる。そこで,防災関係資料のデータ入力の効率化のため,紙媒体で作成されたデータをOCRソフトを利用したり,温泉を音声認識ソフトを用いてテキストデータに変換し利用する方法が増えつつある。
以下では,これらデータの属性に応じたデジタル化の典型的な流れとその事例を示す。