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歴史的にみて海賊行為は、陸上に本拠を置く海賊を取り締まる事で押さえられていた。海賊仲間のリーダー格が略奪をすれば大砲で攻撃を受けると判断した場合、ほかの方法で収入を得ようと、その力を他に向けるのであった。植民地体制というのは不当な体制であったが、多くの人々に貿易を余儀なくさせるという良い結果ももたらしている。それは又、経済の成長を助長し、商業上の相互依存の文化を促進させたのであった。海賊グループの中には、海賊行為は自分達自身の貿易を攻撃するものであると悟る者もいた。不幸にして平和と相互依存の文化はそれを維持できる力が存在する時だけに持ちこたえられる。かってのユーゴスラビアの最近の出来事がこれを立証する。

 

第2次大戦後、植民地をもっている国々に、その体制を止めさせようとする要因がいくつかあった。これらの要因には植民地そのものが独立を願う場合から、植民地を持つ国々の関心が他に移ってしまうものまであった。後者のケースは1960年以降、少しづつその政治と経済の関心が広い世界からヨーロッパコミュニティーに移って行ったヨーロッパの国々に最も多い。

 

その多くの場合、関心の移行は、こうした国々に植民地の秩序を維持するだけの力が消滅してしまった事実に平行して起こった。この傾向は第二次大戦後に始まったが、特に1990年の冷戦後までには著しくその数を増した。多くの国にとって、今までの効果的な力の縮小が意味するものは海賊が再び出現し得るという事実と、海賊が陸の本拠地は攻撃を受けないと承知している事実であった。こうした海賊は、その地域の政府から内々ながら正式に支持されている権力者から受ける保護を享受していると考えられる。

 

この経済的政治的要因を調査中に、海賊行為が増加している理由と犯罪ごとに平均的被害額が増大している理由について一連の理由がわかってきた。海賊行為が多く発生するアフリカ、南アメリカ、そして東南アジアの各地には、この問題に経済的に対処できないか、あるいは無関心なのである。その上、海賊行為の問題や理由は多岐にわたって複雑でもあり、一国の原因に取り組んでみても、その結果が他の国への適切な解決法とは限らない。 だから解決策は世界的にも地域的にも通用するものでなければならないのだ。

 

海賊行為発生の折り、裁判権や起訴については海賊問題と戦う上でいつも障害になっている。しかし、今日の国際条約、特に1988年のローマ条約は、各国の国内法に基づいて海賊の追跡、逮捕、有罪宣告の権利を認めるという的確な条約である。もし、国際組織や国々に積極的に行動を起こす様説得できるなら、海賊との闘争に大きな違いが出てくるだろう。

 

第3章 海賊行為の地域差

 

過去10年間に5種類の特別なタイプの海賊行為が、見られ、その各タイプに海賊行為が発生す

 

 

 

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