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ところが、多くの国民国家がこの税に熱狂しているように、諸外国の州・県といった中間段階の政府もまた近年ますます熱い視線を送っている。

 

小論の課題は、上記の問題意識から、付加価値税に州・地方政府が参与するいくつかの方式をケース・スタディをまじえながら比較検討し、その長短を地方税財源の拡充の観点から論じることである。ここでいう「地方税財源の拡充の観点」とはおよそ次のような内容を念頭においている注3。第一に、地域間の租税境界を必要としないシステムであること。第二に、課税ベースの統一性を確保しつつ、地方政府に税率決定権を与えること。第三に、中立性、すなわち事業の立地等の経済活動を撹乱しないこと。第四に、複雑なルールや過剰な行政的裁量を排除した簡素な税務行政。第五に、地域間取引の課税原則にかかわらず、国際貿易は仕向地原則で課税することなどである。

 

2. 諸外国における消費税の配分

 

一般消費税を複数段階の政府レベルに配分する方式は、各国毎の歴史的・社会的条件に規定されて、一様ではない。表1は、IMFのGovernment Finance Statisticsに記載されたデータにもとづき先進工業国と途上国・移行経済国、連邦制国家と単一制国家という視点から消費税の配分をまとめたものである。ここでいう「間接消費税」には個別消費税および一般消費税(小売、卸売、製造者売上税、取引高税、付加価値税など)が一括して計上されている。この表から以下の事実を確認することができる。

 

まず、先進工業国であれ途上国・移行経済であれ、単一制国家では一般的に地方政府に配分される間接消費税は、一般消費税・個別消費税を問わず、ネグリジブルであることがわかる。その例外は日本であり、間接消費税の23.4パーセントが地方政府に配分されている。この数値は1997年4月に導入された地方消費税は含まれていないので、実際にはそれ以上の割合が地方政府に配分されているとみてよい。これに対して、連邦側国家では多様なやり方で、一般消費税を複数段階の政府レベルに配分しているといえる。

ひとつの類型は付加価値税であれ、小売売上税であれ、すべての一般消費税をもっぱら州・地方政府が徴収するタイプの国々である。もっとも付加価値税を州・地方政府だけが徴収している連邦制国家は存在しない。アメリカ合衆国は連邦政府に一般売上税がなく、大半の州・地方政府が小売売上税を徴収しているので、82.5パーセントが後者に

 

注3この基準は、Poddar S.N.[1990]"Option for a VAT at the State Level,"in M.Gills,C.S.Shoup,and G.Sicat,eds.,Value AddedTaxation in Developing Countries (Washington: World Bank)にもとづいている。ポダー論文は地方税としての付加価値税がとりうる形態を包括的に論じている。

 

 

 

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