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大阪市における環境行政の展開

〜大阪市環境基本計画の着実な推進〜

 

大阪市計画調整局企画調整部

政策調査課長 北村 英和

 

1 は じ め に

 

我が国においては、昭和30年代以降、都市への産業や人口の集中により、大気汚染や水質汚濁等の産業公害が問題となった。大阪市においても、極めて深刻な公害問題が発生したが、国における関係法令の整備や産業界の協力のもと、大阪市独自の積極的な施策の推進により、その解決に一定の成果を収めてきた。

昭和50年代以降、環境問題は、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動の定着により複雑・多様化し、自動車公害などいわゆる都市生活型公害への対応や膨大な量の廃棄物の処理、有害な化学物質による汚染の防止などが、大きな課題になってきた。また、都市における自然とのふれあいやアメニティの向上などの住民ニーズの高まりに応えていくことも必要になってきた。

さらに、近年では、地球温暖化やオゾン層の破壊、世界各地で進行する公害問題への対処等が大きな課題となり、人類の生存基盤である地球環境の健全性が損なわれるおそれが生じている。地球サミットの開催を機に、世界的な取り組みが進められているが、これらは都市の環境問題とも密接にかかわっており、その解決に向けて、地域における環境保全対策をさらに進めていくことが求められている。

 

大阪市においては、平成2年10月に、21世紀に向けたまちづくりの指針として「大阪市総合計画21」を策定し、住・職・遊のバランスのとれた「人間主体のまち」「世界に貢献するまち」の実現をめざしている。

特に、環境の分野では、地球環境に配慮した、人々が豊かな都市生活を楽しめるアメニティ豊かな都市空間の創造をめざしており、平成3年7月には「大阪市環境管理計画[EPOC21]」を策定し、都市環境の保全や創造に関する施策にとどまらず、UNEP国際環境技術センターなどを通じた環境保全技術の移転など、地球環境保全に向けた取り組みを推進してきた。

さらに、平成7年3月には、大阪に住むすべての人々が、安全で健康かつ快適な生活を営むことができる良好な都市環境を享受できるよう、環境の保全と創造に関する基本理念と新たな環境政策の枠組みを規定した「大阪市環境基本条例」を制定した。この条例では、基本理念として、「良好な都市環境の確保と将来世代への継承」「環境に十分配慮した環境への負荷の少ない都市の構築」「資源の適正管理と循環的な利用の促進による持続的な発展が可能な都市の構築」「地球環境保全の推進」の4つを掲げている。

この条例に基づき、順次、「地球環境を守る身近な行動指針―ローカルアジェンダ21おおさか―」の策定や「大阪市環境影響評価要綱」の制定、「大阪市自動車公害防止計画」の改定などを行うとともに、平成8年8月、環境基本条例の目的・理念の実現に向けて、環境の保全と創造に関する施策を推進するための基本方針や目標を定めた「大阪市環境基本計画」を策定したところである。

現在、大阪市では、この「大阪市環境基本計画」に基づいて、諸施策の推進に努めているところであり、本稿では、その計画の内容を概観するとともに、特色ある取り組みについて述べることとしたい。

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