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おわりに

「サステナブルシティかわさきに向けて」と題し、私なりの思いをめぐらせてきたが、書きたりないことも多く、まだまだ、具体的な提案に至っていない。

一つの希望は、かわさきの地を愛する市民の方々との協働である。

川崎市は、各区ごと、三年間にわたり行政と市民の協働作業として「区づくり白書の策定」を行ってきた。福祉、水と緑、ごみ、リサイクルなどその課題は多岐にわたった。私は、「多摩区づくり白書」の担当として参加し、鮮烈な議論を行ってきた。特に、「水と緑部会」では、多摩区の緑地に建設される、ある公共施設を巡って議論は白熱した。この間、建設箇所は二度変更となったが、市民間の意見調整には至らず、その代わり、「多摩区づくり白書」には一切の記述を行わないことで合意にいたった。

パンドラの箱から最後に「HOPE〜希望」が飛び立ったように、一つの「提言」が残った。この緑地を行政と市民が協力して維持保全することが記述されたのである。もう一度、両者の関係をいやす事、賛成する市民も反対する市民も、この緑地に集まり、実際に汗を流しながらこの地域の将来を語ることがまとめられた。

いま、私もこの活動に参加し市民の方々とともに竹を刈っている。荒れた雑木林が少しずつ人の手によって整った里山に変わっていく。今年の春、「タマノカンアオイ」が芽を出すことだろう。そして、そこには、春蘭の秘めた優しさも。

小さな雑木林、ここから、行政と市民の協働作業がひろがっていくことを心から念じる。私たちの刈り取った篠竹、そこだけが明るい。

ふと見上げる。

篠竹の間に「青い空と白い雲」が、のぞまれる。

それは、長い間培ってきた「人間都市かわさき」の象徴であり、また、新たな時代、「サステナブルシティ・かわさき」に向けた希望でもある。

 

参考文献

・『地球温暖化を防ぐ』、岩波新書、佐和隆光、97年

・『地球環境報告』、岩波新書、石弘之、94年

・各新聞社記事・社説

 

 

 

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