日本財団 図書館


を及ぼす人類の生存基盤そのものを揺るがす問題として、新たに環境問題の中心課題として浮かび上がってきた。

(2)環境問題の構造の変化

旧来型の産業公害においては、加害者が企業・事業者であり、被害者が特定の地域の住民であることが多かったが、都市生活型公害や地球環境問題においては、一般市民の大量消費・大量廃棄型の日常生活や通常の産業活動に伴う行動が環境負荷の発生原因となるため、特定の企業だけでなく、すべての企業や一般市民が加害者であり、かつ被害者となりうるという状況が生じてきた。このため、これまでの「産業」対「地域住民」の鋭い対立の構図に代わって、エネルギー・食糧・人口問題をはじめ、現代の生活様式からそれを支える社会システム自体に至る様々な事柄が、相互に関連しながら、多面的・複合的に環境に影響を与えることが認識されるようになった。このため、環境対策も、一企業内や産業界における対策に留まらず、広く、大量消費・大量生産型の社会システムや生活様式を視野に入れなければならないようになった。

加えて、地球環境問題が重要視されるに伴い、これまで内政問題と考えられてきた環境分野においても、政策の国際的連携の必要性が増し、我が国の政策を検討する場合に諸外国の動向を視野に入れる必要性が高まってきた。例えば、地球温暖化を効果的に行うためには国際的な環境政策の協調が不可欠なものになっている。

 

2 新たな環境問題

上述したとおり、環境問題の構造が変化したにもかかわらず、それに対する対策は遅れている。この変化への対応の遅れが蓄積した結果、地球温暖化問題やオゾン層破壊の問題に見られるように、人為的な活動が環境に与える影響は全地球的な規模となった。このような状況が明らかになるにつれ、このままでは人類だけでなく、地球上の生物全体の生存基盤が失われかねないという認識が国内外で高まってきている。

(1)地球温暖化、オゾン層破壊等の地球環境問題

地球温暖化に寄与する主要な温室効果ガスであるC02の濃度は、産業革命前の約280ppmから現在約360ppmまで増加し、さらに上昇中である。このため、過去100年間で地球上の平均気温は0.3〜0.6度上昇しているが、このような変動は、過去1万年の間に例を見ないものであると言われている。現在のCO2等の温室効果ガスの排出増加傾向が続けば、現時点での最も確度の高い予測では、2100年に気温は2度上昇、海面は50センチ上昇することが予想される。

50センチの海面上昇で、高潮被害を受けやすい人口は全世界で2倍の約9,200万人に増加し、日本の砂浜の7割が消失する。また、地球の全森林面積の三分の一で現在の植生が大きく変化するおそれがある。

南極のオゾンホールは、1996年にも過去最大規模の2,600平方キロに拡大している。また酸性雨についても、我が国でも欧米と同じ程度のph4台の酸性を示す雨が降下しており、今後、土壌、湖沼等の被害が顕在化するおそれがある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION