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すことに力を入れています。」という発言をされました。アソシェーションを重視するというだけでは足りず、古い仕組みを壊すというところまで自治体職員が考えておられるということに、驚きと感銘を受けました。

伝統を誇る都市や農山村で、このような考えを受け入れることは、非常に難しいと思いますが、もう、その切替をすべきときではないでしょうか。義務感を基礎とする既存のコミュニティ活動より、やりたいからやるという新しいアソシェーション活動の方が、現代の人に受け入れられやすいと思います。また、創造的な活動である地域づくりには、その方がふさわしいとも思われます。

?については大切なことなので、次項で改めて述べます。

大井川町での「住民主体のまちづくり」の取組みは、始まったばかりで、まだ見るべき成果は上っていません。しかし、すでに、町長が全集落を回って説明会を行ったり、町の職員が、集落や住民の組織の会合に出て行って、自分たちの仕事の領域(福祉、環境、税務など)の説明をする『出前セミナー』を行うなど、準備が進められています。また、住民が集落の課題や資源を、自分たちで実際に歩きながら確認する、ワークショップ型の『くらし発見事業』も行われています。

 

●もうひとつ協働:「行政主導・住民主体のまちづくり」

次に、住民主体の地域づくりにおける、行政のあり方を見るために、山形県と熊本県の2つの小国町の例を挙げてみましょう。

山形県小国町は、昭和43年に、住民の使い勝手を第一に考え、多数の省庁の補助金を使いながらひとつの建物にまとめ上げた『おぐに開発総合センター』を造りました。その完成20周年の記念碑に、「住民主体のまちづくりの心を育む」という言葉が見られるほど、小国町は住民主体のまちづくりの大先達です。この町ではさらに、過疎化の進む集落に、通常の8倍以上の10億円の建設費を投じて小中学校を再建しました。当時の児童生徒は、合わせて19人しかいなかったので、1人当りにすると5千万円以上の巨費になります。しかし今、その学校は地域住民のさまざまな活動の拠点となり、また町全体の他の小中学校のセカンドスクールとしても利用されて、集落の活気の源泉になっています。そして子どもの数は35人に増えました。

同じ小国町でも、熊本県の小国町では、過疎化と高齢化が進む町の中でも、もっともその傾向の強い戸数160戸余りの集落に、16億円を投じて下水道(集落排水事業)をつくりました。住民がみんなで地域の将来を考えるための会合の中で、高齢者から出された、「都会に住む孫に、『おじいちゃんの家は便所が臭いし、怖いからもう行きたくない。』と言われた。」という切実な悩みを全員が共有し、計画にまで高めたからです。町長は、そこまで住民の意志がまとまったなら、それを最大限に尊重する、と言う考えから、その計画に応えたわけです。各戸の負担金を含む事業の同意書は、住民の手によって集められ、事業は速やかに進められたそうです。

2つの町の例は、どちらかといえば行政主導の地域づくりではありますが、いずれも県や国の方に向いた行政ではなく、住民にとって最善の施策は何かを考え、必要と判断すれば困難を乗り越えて実現していくという、まさしく住民主体の地域づくりであると見ることができます。2つの町の例から、住民主体の地域づくりを進めるための、行政のあり方を、次の3点にまとめてみました。

?広い意味の住民の福祉の向上を常に考え、本当に必要なものを判断する目を持つ

?生活者の視点から見た総合性に基づいて、縦割り行政の壁を崩す

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