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ことは、観光客の押し寄せる現在の湯布院観光に甘んじるのではなく、社会のことをもっと学び、型にはまった発想ではなく、自由に伸び伸びと活動を行うことであり、失敗を恐れることなく情熱を傾けることではないだろうか。そして、その情熱こそが将来の湯布院に大きく影響していくに違いないと私は思うのである。

現在の湯布院には、沢山の問題点が目につく。まず観光客が盆地の中だけに集中しているため、湯平温泉や塚原温泉へ観光客が流れにくくなっていること。また人口も盆地の中に集中しているため盆地外の地区では過疎化が進んでいること。また、地価の高騰により、帰郷してきた人達が土地を買いにくくなっていること。農業や牧畜業の後継者がいないため、多くの農家が農業を続けるのに困難な状況にあること等々。住民が正面から目を向けなくてはならないことが沢山ある。

 

〈行政への提案〉

住民主体の「町づくり」には限界があると私は思う。確かにイベントを企画したり、シンポジュウムを開いたりして、住民の活力を沸き立たせることはできる。しかし、図書館や集会場といった公共施設の充実、整備された道路、福祉サービス等、住環境をつくるのは行政の役割であり、快適な環境をつくっていくのは行政なのだと思う。その快適な環境をつくるためにも、住民の町に対する意識を向上させることと、官民一体となった取り組みが、ここ湯布院では一層重要となるのではないだろうか。

また、住環境だけでなく、観光業にも行政が取り組んではどうだろうか。例えば、稲作をされていない田んぼを行政が借り受け、グリーンツーリズムを展開してはどうだろうか。そして、野菜づくりの指導には、地元で農業を営んでいた老齢の方々に参加してもらえば、観光客と住民とがふれあえる場を提供できるのではないだろうか。その他に、木工製品や竹製品をつくる職人の育成を行政が行い、産業基盤を育ててみてはどうだろうか。

ただ単に、補助金や助成金を民間にあたえるのではなく、行政が主体となって観光基盤、産業基盤の形成をおこなってもよいように思える。

今年も、新緑の季節をむかえ、青青と茂る樹々のすき間から日差しが差し込み、田植え前の水の張った田んぼでは、沢山の蛙の鳴き声が聞こえ、夜になると沢山の蛍が飛び交い、穏やかな初夏を演出してくれる。

春には菜の花の咲く小道を辻馬車がゆっくりと走り、秋には風にゆれるススキが夕日にあたり黄金色に輝く。冬には真っ白に雪化粧された由布岳と、金鱗湖からたちのぼる白い湯けむり。この美しい自然こそ湯布院の大きな宝ものであり、この自然とこの町を愛する住民がいるかぎり、「潤いのある町・湯布院」はきっと健在であろう。

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