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への帰属意識が基礎的自治体としての市町村を支える基盤である以上当然のことといえる。

 

住民の生活に直結する福祉等の行政については、地域の実情を最も良く知る市町村を主体とすることが、住民の意向の反映という点からも、その効果的な実施の面からみても望ましいことであり、これに必要な権限は可能な限り市町村のものとすることが適当である。また、これらの権限を有効に活用するには、市町村の行財政能力の向上が必要である。

ただ、この点に関しては、合併による市町村の規模能力の拡大は、移譲された権限を十分に使いこなすための有力な方策のひとつという考え方によるべきである。いわゆる分権の「受け皿」論は、ともすれば、合併による行政能力の向上を見るまでは権限の移譲を行うことはできないという、いわぱ逆立ちの議論の論拠に用いられる例が多い。

 

行政運営の効率化や経費の合理化については、たしかに管理的な諸経費の節減ができるだろうし、より広域的な計画による諸施設の合理的配置も可能となるであろう。

ただし、市町村運営の効率は、企業経営における効率と共通の側面も多いが、異なる面もかなりあることに留意する必要がある。市町村行政の効率化・合理化は、サービスを受ける住民の便益とのかね合いで判断すべき点が多いからである。

 

合併の圏域の問題は難しい。ひとくちに生活圏というが、ひとりの人間についても職業人としての生活の側面と家庭人としての日常生活の面では異なるし、子供か←大人か←老人か等によっても異なる。一方、行政サービスも、その種類に応じて、適切な供給範囲の広狭は区々となる。

複合的な住民生活の実態と市町村の供給する行政サ―ビスのかかわり方、さらにその地域の地理的諸条件などを併せ考えなければならない。一定規模の人口をめざすあまりに、山や海を超えた広大な地域にまたがることとなり、住民相互の往来すら自由にならず、一体感の希薄な自治体をつくるなどというわけにはいかないのである。

 

ともあれ、市町村の合併は、うまくいけば種々のメリットを期待できる。住民の自主的判断を支えるための適切な情報の提供や、行財政措置の充実などの環境の整備が望まれるところである。

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石川県輪島市 白米千枚田

 

 

 

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