されたので,詳細な構造強度解析を実施するため有限要素法による三次元解析を広く実施。
省エネ対策の多種多様な船型開発,ディーゼル機関の燃料消費率低減,自動化による省人化策等。
・管理技術:建造効率を高めたブロック建造に対応する,ステージ別建造工程管理の採用。更に設計段階からの情報の電子化,即ちCIMS化による工程管理技術の高度化。
・材料技術;重量軽減化と船型の大型化による厚板化を避けるため,高張力鋼の大幅採用。
温度制御圧延方式によるTMCP鋼高張力鋼の開発により,大入熱溶接法等効率的溶接法の開発。
・建造技術;溶接構造の採用と共に,建造方式も大ブロック化し,またVLCCの連続建造に適した新しい思想と設備を持った大型造船所が建設され,VLCC等大型船の建造技術は急速に進歩。同時に建造の短期化,効率化を計る先行艤装方式等も大幅に採用された。
日本の造船を世界一の座につける事が出来,現在迄それを維持出来ているのは,必ずしもこの様な技術開発による事が全てであるとは言えないが,やはり,これらの技術がベースとなり,「早く,安く,高品質に,大量に」大型船等の建造を可能とした事は事実である。
3 戦後の欧米における技術
戦後の欧米,特に北欧諸国において,その後の日本造船技術の原点となるような,新しい思想の建造設備,建造法が開発,実行され,当時の日本造船界に大きな刺激となった。我が国の技術開発は,新しいものを創造,創出する面の開発ではなく,大型化にも対応し,大量に,早く,安い建造を可能とする技術開発に向かったが,欧米ではその頃,荷主,海運,造船が連携し,貨物によりその輸送に最も適する専用船の開発が進められた。専用船の開発により,海上輸送効率は大幅に向上し,世界の経済発展に大きく貢献して来ている。各種専用船の開発,誕生は,その必要性による所が大きいが,単に必要に迫られてということだけではなく,斬新な発想と技術力なくしては実現出来ぬであろう。発想の転換と勇気ある決断により誕生して行った主な専用船の建造,就航状況は次の通りである。
・コンテナ専用船:1957年セル構造を持つフルコンテナ船(35フィートコンテナ226個積)がアメリカで誕生。
・自動車専用船;1965年1,350台積みロールオン/ロールオフ方式専用船がノルウェー船主により運航開始。
・LNG運搬船;1964年27,400m3型コンチ独立タンク方式LNG船がイギリスで建造。
1967年71,600m3型ガストランスポート方式メンブレンLNG船がフランスで建造。
1973年87,500m3型モス球形タンク方式LNG船がノルウェーで建造。
・ばら積貨物船;1955年15,400重量トン型多目的ばら積貨物船が日本鋼管清水で建造。
この他,高速船の分野を見ても多くのコンセプトは海外で開発され最初に建造され,運航実績のあるものが国内にて建造されて来ている。海上輸送の効率化に大きく貢献し,造船ブームをもたらした多くの専用船のオリジナルコンセプトは残念ながら,我が国の技術開発によるものではない。
4 造船技術の周辺への展開
造船の技術を活用して石油掘削リグ,大型クレーン台船,大型浮体構造物等数多くの海洋構造物が建造され稼働している。造船業界が大型海洋構造物に比較的容易に取り組めるのは,船舶の設計/建造で培った技術が活用出来る事が大きい。即ち,浮体構造物の波浪による運動応答,波浪外力推定技術,浮体構造物の強度解析及び建造技術等は,造船の技術をそのまま流用できる。これらの技術を出来るだけ有効活用して,今後造船界の更なる発展を望むには,やはり海洋分野への展開,拡大が必要不可欠であろう。現在,メガフロート技術研究組合において,超大型浮体構造物の研究開発が行われている。これを足がかりに,造船業界のみならず他業界とも共同し,それぞれの特徴的技術を活用する新規的な海洋構造物の創出に取り組むべきである。最近では,空港,港湾関連施設等にも海上空間を利用した大型浮体施設案が考え出されており,是非とも各界の力を同一方向に向け,多くの大型浮体施設の実現を期待したい。
5 造船技術の高度情報化
コンピュータハード,ソフト並びに情報通信技術の著しい発展に支えられ,産業と社会の構造を変える様な時代が到来するであろう。物流の世界も同様で,海運,造船業のあり方も変革を迫られるであろう。
新しい情報・通信技術は,新しい時代へ向かう手段,