○いかだの転覆とシーアンカーの効果
膨脹式救命いかだは形状的に安定性がよい上に、剛体ではなく柔軟であるため傾きにくく、また波に沿って変形するので浮心の移動が少なく復原力の損失が少ない。しかし乾舷が低いために水が打込みやすく、水が傾斜した床にたまった場合、または乗員が片寄った場合は重心移動が大きく、安定性を矢なうことがある。従っていかだの天幕は単に雨水の採取や発見しやすいことのためではなく、打込水を防ぐことで重要な意味がある。
シーアンカーの使用目的は、風により漂流するいかだの速度を大幅に低下させることにあるが、極度に傾斜して高くなった側が水面から離れ、そこに風が当って転覆する恐れがあり、シーアンカーを流した場合、風上側の浮上を抑止する効果があるとの説もある。
昭和61年7月1日以降船舶救命設備規則の改正(第一種、第二種適用)でシーアンカーの性能が大幅に強化され、開口部径も約1.5倍と大きくなっている(型式承認品)。
シーアンカーの水圧抵抗は次式で与えられる。
Fo=42.01 SRV2
Fo: 水圧抵抗(N)
SR: いかだの床面積(?)
V: 曳航速度(m/sec)
シーアンカーの曳航速度は通常1.5m/secで与えられるので、25人乗りいかだの場合、シーアンカーの水圧抵抗は、879N(≒90kgf)となる。
第一種いかだでは、安定水のうも大幅に強化され、25人乗りいかだでは水のうには入る水の量は、500kgにも達する。いかだの揚収に当っては、この水の重量に十分注意する必要がある。