図3.4.1に年間トータルコストの内訳を二つのケースを比較して示した。この中で資本費と船費は航海数に関係しない年固定の支払いであり、特に資本費は船価によって決まっている。従って耐氷仕様による船価の増大を回収するためには航海数を増やし、年間輸送量を増加させねばならない。一方、燃料費、港費、砕氷船傭船費、SUEZ運河通行料等の運航費は航海数にともなって増加する。その中で、砕氷船傭船費の全コストに占める割合(約26%)は、約1往復の航海数増加はあるもののSUEZ経由におけるスエズ運河通行費の割合(全体の約18%)と比較して高いのが分かる。
4)輸送トン当たりのコスト
上記2)で年間輸送量は大幅に伸びると予想されたが、船主が荷主から得る運賃は通常輸送貨物の単位重量当たりに対して設定されている。従って、輸送単位重量当たりのコスト(トータルコスト/輸送量)が低ければ低いほど採算の向上が図れる。氷海用商船の船価が従来船の25%増であると仮定した条件では、年間輸送の場合で、計画船-NSR経由が1,987円/ton、従来船-SUEZ経由が1,925円/tonとなり、計画船-NSR経由は約3%のコスト高となる結果が得られた。7月〜10月の夏期輸送だけを見た場合には、計画船-NSR経由が1,813円/ton、従来船-SUEZ経由が1,925円/tonで約6%のコスト安となっている。以上の結果から、運賃に対応する輸送トン当たりのコストは、運航時期の設定によって変動はあるものの、計画船と従来船でほぼ同じと言える。