第6章 着氷防止・除去に関する新技術開発の提案
これまでの調査により、過去開発された諸対応策も決め手となるものではないことが判明した。
方法論としては確認されていても、内容が経済性や耐久性、普遍性等に満足するものではなく、残念ながらあまり普及しないまま現在に至っている。着氷による海難事故も少数とはいえ現在でも発生しており、撲滅のため新しい対応策の開発が必要である。
甲板上の機器類も多種多様で、共通的に実施できそうな対策や個別でなくてはできない対策もあると考えられるので、ここでは一応個別の機器毎に検討し提案したい。
第1章で述べたごとく、着氷の防止・除去のための方策を検討するに際し、その切り口として、次の項目を検討する必要がある。
?熱エネルギーの利用 電熱ヒータ、温水、温風等
?化学物質の利用 塗料、油脂、薬品等
?物理的特性の利用 難着氷性素材(樹脂、ゴム等)等、
?機械的特性の利用 振動、衝撃等
これらの項目を検討し、単独では効果がなくとも複合して使用すれば効果がある場合もあるので総合的に研究する必要がある。
6.1 救命艇(ライフボート)
救命艇(ライフボート)そのものが大型であり且つ形状が複雑であることを考慮すると、熱エネルギー利用や化学的、物理的或いは機械的方法のいずれも採用できない。したがって、救命艇単独では着氷から守ることは不可能となる。
しかしながら、次善の策として凍結しにくい環境下にすることは可能である。
すなわち、海水のかかりにくい場所(環境)で、なおかつ乗艇に必要なスペースが確保できる場所を確保することである。
第4章の4.1で述べたごとく、ルールに抵触しない範囲で半密閉型の収納部を設け艇を格納する。さらに、ボートダビットやワイヤに氷が付着しないようにするため、難着氷性の塗料又はグリスを塗布しておく(艇全体ではなくダビットやワイヤならば化学的方法の適用も可能と考えられる)。
開発必要技術 ・はっ水性塗料の開発
・はっ水性油脂(グリス)の開発