(2)VHF送受信用単一型空中線(国際VHF)
150MHz帯であるため、空中線長は短くて軽量であり、また構造も単純である。
電波電ぱん特性からも、マストの最上部に設置されているので、着氷の被害が少ないが、19トンクラスの漁船では相対的に低位に設置されるので着氷にみまわれ、ハンマリングで対応している。しかし、中型船以上ではほとんど放置されたままとなっているが被害の声は聞かれない。GMDDSの義務設備の空中線であるが、出来るだけ高い場所に設置すれば問題はないようである。
(3)HF(27MHz帯)送受信用空中線
約2.5m長のグラスウール製の垂直ホイップ部と、それと同じ長さのアースプレーン(ビニール線)によって構成される、代表的な1/4ラムダ型の空中線であり、ほとんどの漁船に装備されている。標準的には、4〜5mの木柱の頂部にベース金具を取り付け、それから約45度の角度で、斜め下にアースプレーンを張る。これは、付近の構造物の影響を最小にして、電波の輻射効率を最良にするためで、その展張角度と、方向及び長さを調整して使用するが、機能上フレキシビリティが要求され、3mm程度の太さのビニール線が使われている。このため、アースプレーンは着氷に対して最も弱いが、垂直ホイップ部は動揺や風による「しなり」のため、比較的着氷が少なく折損事故がない。
国内の現地調査船では次の対策を施しているケースがあった。
?アースプレーンを全部ビニールホースに通し、支持柱に垂直に固縛する。
この方法は、電波の輻射効率を低下させるが、ハンマリングに対しても切断することがない。しかし、輻射効率を出来るだけ低下させないようにするため、着氷時期の前に施工せねばならず、作業が煩雑である。
?ごく一部で、アースプレーンを持たない、5〜7mの1/2ラムダ型の空中線を使用している。着氷に対してのデータは得られなかったが、ホイップ部と基部の簡単なコイルとで構成された単純構造なので、この用途には向いていると考えられる。
(4)6m及び8mホイップ空中線
装備スペースを必要としないのでMF.HF帯の送受信用として、一般的に使用されている。
送信用としては、基部を傘型碍子(6mのものは1個、8mのものは2個)で、また受信用はエレメントの基部を金具で保持する構造になっている。現在、全波受信機、DSCW2、気象ファクシミリなど広汎に用いられており、複数本装備される場合がある。
送信用は、普通操舵室上にポールを立て設置するが、無線室への引き込みは逆L型空中線のそれと並べて設置される。国内の現地調査では基部の傘型碍子に着氷が著しく、ハンマリングで碍子を破壊してしまうので、それを保護するためシートで覆っているケースがあったが、送信効率が低下することが懸念され、電気的には問題があろう。
垂直エレメント部は「しなり」のためか、着氷は少ないとのことであった。 受信用は、その構造からして軽量でかつ船内への引き込みも同軸ケーブル(RG/12UY)であるため、比較的高い位置に装備出来るので着氷被害も少なくすることが可能である。しかし同軸ケーブルとの接続のためにアレスターを組み込んだマッチングボックスを近くに設置して、空中線と単線で接続するが、保護のためのビニールホースなどに通して、さらにポールなどに固定し、ハンマリングに耐えられるよう設置している船があった。
(5)ナブテックス受信機用ホイップ空中線
GMDDS義務設備として、平成7年2月1日をもって、該当船すべてに装備された。
約60cmのスチール製の垂直エレメントと基部カップラで構成され、比較的高所に設置されている。まだ歴史が浅いためか、現地調査でも着氷による被害は確認出来なかった。