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3.2.3 総合評価

 

(1) 3000A級Nb3Sn永久電流スイッチの試験結果 

(a) 平成8年度に製作した3000A級Nb3Sn永久電流スイッチの静止通電試験において、電流3000Aを2時間余り連続通電し何ら異常が生じないことを確認した。また、磁界2Tおよび3Tで限界電流3600Aおよび2996Aという結果が得られ、これから磁界1Tにおける限界電流は約4800Aと推定されるが、2時間の連続通電が確認された電流3000Aとから、本永久電流スイッチの実際の性能に基づく定格電流は磁界1Tにおいて3000〜4800Aの間にあると考えられる。 (b) 3000A級Nb3Sn永久電流スイッチの電流リードおよび端子部の改造を行った後の加振試験の結果からは、高周波数の振動が加わるような場合には電流リード部の振動を抑制するような構造が必要であるとわかった。

(2) 10kA級Nb3Sn永久電流スイッチの設計結果

(a) 10kA級Nb3Sn永久電流スイッチの概念設計を行った結果、オフ抵抗6Ωで単一素子とする場合に質量46kg、大きさ約400φ×110mmの円筒形状となった。これは、ヤマト1用の4000A級NbTi永久電流スイッチ(オフ抵抗9Ω)の質量55kg大きさ約280φ×365mmに対し、単位[オフ抵抗値・(電流)2]当たりの質量および体積で比べると、質量および体積がそれぞれおよそ20%および15%に軽量・コンパクト化されたものとなっている。

(b) Nb3Sn永久電流スイッチの構成としては、質量および大きさの観点からは単一構成および一次撚り超電導線による3並列構成がほぼ同等であるが、?単一構成では電流均等化のための常電導抵抗が不要であること、?超電導線自身の臨界温度が高く単一構成でも安定であり並列構成による総合的安定化が必要ないこと、?実際の並列構成では冷却面積が大きく断熱材がここでの検討結果より増えて大きさおよび質量が増加する可能性があること、などから最終的には単一構成が適していると考えられる。

(c) オン-オフ特性の計算機シミュレーションでは、オフ抵抗6Ωの単一構成の場合にヒータ加熱200W-180秒間で超電導線が100%常電導転移するという結果が得られた。ただし、実際に製作する際には、冷凍機容量および運用上の動作時間に対する制限などを考慮してこのオン-オフ特性を最適化する必要がある。

 

今後の課題としてはスイッチの開閉特性の改善が考えられる。超電導線巻き部の均熱化処置を施すことなどによりヒータ容量の増加を伴わずにオン-オフ切り替わり時間を短縮すれば、電磁推進船のみならず幅広い分野で使用可能な高性能永久電流スイッチを実現できるものと考えられる。

 

 

 

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