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3. 超電導電磁推進装置の高出力化に関する調査研究

 

超電導電磁推進船が実用的な船舶として用いられるためには在来船と同等か、それ以上の性能が要求される。そのためには超電導電磁推進装置の本体となる超電導磁石の高磁界化、超電導磁石を構成する永久電流スイッチや電流リード、冷凍機等の周辺機器の高性能化を進める必要がある。

本事業では、平成7年度から「Nb3Sn巻き線技術の開発」および「Nb3Sn永久電流スイッチの開発」の2つの研究テーマを課題として調査研究を進めてきた。

「Nb3Sn巻き線技術の開発」では、超電導コイルに一般に使われている合金系超電導線材のNbTiに替わり、臨界磁界の高い化合物系超電導線材のNb3Snを用いた高磁界用超電導コイルの巻き線技術について調査研究を行うこととした。

「Nb3Sn永久電流スイッチの開発」では、高磁界超電導磁石を永久電流モードとして運転するために不可欠な、信頼性の高い大電流永久電流スイッチを開発することとした。

なお、「Nb3Sn巻き線技術の開発」研究は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と共同研究を行うこととしたが、同研究は日米協力研究のテーマとしてとりあげられ、米国ローレンスバークレイ研究所(LBL)のD20高磁界実験装置を用いて励磁特性実験を行うこととして計画した。

以下、その内容について述べる。

 

3.1 Nb3Sn巻き線技術の開発

 

超電導電磁推進船において、高磁界化は高出力化・高効率化の必須条件であり、高い臨界磁界を持つ化合物系超電導体は磁石の材料として当然魅力的なものである。

しかしながら、超電導磁石には合金系のNbTiがもっぱら使われており、化合物系の超電導体はあまり使われていない。その理由は化合物系超電導体が化合物であるがゆえに割れやすく、複雑な形状と極端な電磁力の下にさらされる超電導磁石では、その性能が十分に生かされないためである。

そこで、性能劣化の原因を究明し、高磁界コイル製作上の設計資料を得ることを目的に調査研究を行うことにした。

 

3.1.1 これまでの経過

 

平成7年度は、コイル巻き線作業をコンピュータ制御で行い、コイルの巻き線過程に人為的要素を少なくして実験用コイルを製作できる超電導コイル巻線機を製作した。

平成8年度は、実験用コイルの線材として使用するNb3Sn超電導線材の設計製作を行い、素線の臨界電流や素線間の接触抵抗等の基礎データを収集すると共に、熱処理用の反応炉の調整等を行った。

 

 

 

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