2.2 接触分解法
NOの接触分解は触媒を用いてNOをN2とO2に分解する反応である。分解反応の平衡定数は、(2-1)式で表される[2]。
log Kp = - 1.63 + 9452T-1 (2-1)
平衡は低温ほど分解し易く、O2の存在下においてさえNO分解側に偏っている。ここで問題となるのは反応速度であるが、N-O結合は2.5重結合であり、その結合エネルギーも153kcal/molと大きいため、実際の気相均一系におけるNO分解反応の活性化エネルギーも82kcal/molと非常に大きい[3]。そこで、接触分解法への期待が寄せられている。
今世紀初頭に、PtやIr等の貴金属上で、NO分解反応が進行することが見いだされて以来[4]、すでに多くの研究がある。Shelefら[5]は従来比較的活性が高いと報告された化合物を中心にNO分解活性の再検討を行っている。主な結果を表 2-2に示す。触媒全表面積当りの反応速度から、Co3O4の活性が最も高いことがわかる。しかし、Co3O4は高温でCoOに転移し、失活してしまうので、 担持Pt触媒が最も高活性であるといえる。内島ら[6]はPt系触媒における担体効果,担持法の影響,金属酸化物の添加効果について検討しているが、現時点では実用化を計る研究よりも単結晶や多結晶表面での反応機構解明等の基礎的検討が続けられている。
NO分解反応の反応機構はまだ明確ではないが、NOが触媒表面上でNとO原子に解離し、2つのN原子が再結合してN2が、2つのO原子が再結合してO2が生成すると考えられている。このときN2の脱離は比較的低温でも起こるのに対し、O2の脱離は容易ではない。従ってあらかじめ表面酸素を脱離させておけば、多くの酸化物上でNO分解反応が進行する(表 2-3)[7]。
岩本ら[8]は酸化物に吸着した酸素の脱離しやすさを調べ(図 2-2)、表面積当りの酸素脱離量はCuO>MN2O3>Co3O4>Cr2O3であることを明らかにしている(表 2-4)。さらに、これらを高分散に担持した金属イオン交換Y型ゼオライトについても同様に調査し、Cu-Yが低温から多量の酸素を脱離できることを見いだした[9]。そして、このCu-YをNO分解反応に適用し、比較的低温で活性を示すことが報告されている[10]。また、各種ゼオライトのうち、Cu-ZSM-5がNO