参考資料2 窒素酸化物除去技術の概要
1 窒素酸化物
1.1 はじめに[1]
大気中に存在する汚染物質には、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、粒子状物質などがある。これら汚染物質は人体に有害であり、また酸性雨などの原因となって環境を破壊する。汚染物質の低減のため、例えば、自動車についてはわが国では世界的に最も厳しい排ガス規制が実施されている。これに加えて自動車以外の大気汚染物質排出源に対しても規制が強化され、その結果SOx、CO、HCは以前に比較して大幅な改善が認められた。例えばCOの大気中濃度の経年変化を図 1-1 に示す。しかし図 1-1に示したように、大都市圏においてはNO濃度が依然として高いレベルにあり、環境基準が未達成のままである。この原因としては、燃費に優れているため、最近急増しているディーゼル車、特に大型バス、トラック等の重量車から排出されるNOxによるところが大きい。しかしこれらの排出源に対して有効な排出抑制策がたっていない。そのため環境庁は表 1-1に示したようなディーゼル車に対する新しい排ガス規制を打ち出した。この規制の長期目標は非常に厳しいもので、この規制に緊急に対応することが求められている。さらに船舶用エンジンはほとんどがディーゼルエンジンであり、最近省エネルギーシステムとして開発が進められているコージェネレーションシステムにもディーゼルエンジンが使用されていて、これらの排ガスにも規制が施されようとしている。したがってその低減対策は社会的に重要な問題である。
NOxの低減対策としては様々な方法が考案されている。詳細は第2章で述べる。NOxの性質について簡単に説明する。
1.2 NOxの化学的性質[2]
主な窒素酸化物の物理的性質および化学的性質を表 1-2に示す。