第4章 まとめ
4.1 成果概要
(1)最適触媒システムの設計
・運転状態による船舶からの排ガス組成等の変化の調査
小型内航船用ディーゼルエンジンとして、脱硝率の高い触媒の設計を行うために、種々の運航条件における排ガスの組成等を調査した。
文献事例調査あるいは専門家へのヒヤリングの結果、これまで船舶では機関の効率重視のため燃費の低下につながるようなNOx低減策は採用されておらず、NOxの排出濃度は1500〜2000ppm程度であり、自動車等と比較してかなり高い排出レベルにあることが明らかとなった。また、機関回転数が低いほど排ガス中のNOxの濃度が高くなる傾向にある。特に始動時等の港湾内では機関回転数が低いため、ガスの排出量は少ないが、NOxの濃度は極めて高いものである。
・求められる触媒システムの機能特性の評価
本触媒システムを設計するコンセプトとして、最適触媒システムの機能特性を抽出し、触媒の仕様を検討した。
これまで発電所等で採用されている選択還元法は排ガスの熱により触媒層を加熱し、触媒が最も有効に作用する400℃前後の温度で運転されている。
運行事例の調査結果から、始動時には触媒層の温度が低く、発電所等で採用されている従来型のV2O5/TiO2系触媒は有効に作用しない。一方、帰港時には触媒層は十分に加熱されており、接岸まで触媒層の温度は300℃以上に保たれていることが明らかとなった。したがって、通常の触媒システムでは始動から離岸時の触媒層が充分に加熱されていない時に排出されるNOxの除去が問題となるため、新たな除去システムが必要となる。
始動時に排出されるNOxを吸着剤で吸着する場合に求められる吸着能を試算した。小型内航船の特性から、3時間の運転を想定し、吸着剤にもとめられる吸着能を試算した結果、求められる吸着能は3.3〜4.4cm3 /cm3-catの範囲と試算した。