(3)排煙脱硝技術の現状
我が国の固定発生源からの窒素酸化物(NOx:一般にはNO, NO2)低減対策技術、いわゆる脱硝技術の開発については1970年代初頭から各メーカーが中心となって進め、昭和48年8月に制定された「大気汚染防止法」により加速された。
開発当初は湿式法あるいは乾式法について開発が進められたが、アンモニア(NH3)を還元剤として用いる選択接触還元法(SCR法)の開発により実用機が設置された。このSCR法の適用範囲については、当初、LNG、ブタン焚き等のいわゆるクリーン排ガスを対象としたものであったが、その後実ガスでの実績が得られるに伴い適用範囲もSOx、バイジンを含む重油焚き石炭焚きのいわゆるダーティ排ガスへと拡大し、技術の大幅な進歩を見た。今では適用範囲もゴミ焼却炉、ディーゼルエンジンの排ガスまで広がってきている。
我が国の大気中の二酸化窒素濃度については脱硝装置の普及により一時減少あるいは横ばい傾向にあったが、その後昭和61年以降再び増加の傾向にあり(昭和60年:0.024ppmから平成元年:0.028ppm)、特に都市部においてこの傾向が大きい。その原因としては、発生源の多様化をあげることができるが、特に未対策領域として、小型ボイラー、ディーゼル発電等の中小固定発生源やディーゼル車、航空機、船舶等の移動発生源からの排出が主因と見られている。このことから、今後ますます規制の対象も拡大するものと予想され、新規技術の開発も含めて既存技術の適用範囲の拡大等の対応が必要となってきている。
[各種排煙脱硝技術]
排煙脱硝技術は乾式法と湿式法に大別されるが、現在実用化されている脱硝技術は殆どが乾式法であり、中でもSCR法が主流を占めている。表2.2-3、2.2-4に開発中のものも含めて各種排煙脱硝技術の概要について示す。