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あ と が き

 

本調査研究では、まずわが国の造船業における研究開発が、資金不足、人材不足といった厳しい状況の中にあることが、統計データ及びアンケート調査により明らかにされる一方で、造船関連の研究開発者における技術の高度化と差別化に対する意識の高さと、厳しい現状を打破するための変革への指向性が把握された。

また、わが国の造船業における研究開発体制と、他産業あるいは諸外国の研究開発体制との比較により、ニーズの的確な把握に基づいた研究開発の重要性が示され、特にわが国の造船業の研究開発には、今後、マーケティング機能やコンサルティング機能、あるいは技術シーズと顧客ニーズをコーディネートする機能が必要であることが明らかにされた。

以上のような調査研究結果に基づき、既存型船舶に対する「継続発展型研究開発」、及び新型船舶に対する「創造発展型研究開発」に対して、それぞれ造船所を中心とした新しい研究開発体制、及び専門研究開発機関(COE:Center of Expertise)を中心とした新しい研究開発体制を今後構築すべきである、という提言をまとめることができた。

このような体制の移行にはかなりの時間を要するであろうし、体制作りの前に、まず経営者や研究開発者の意識改革を進めなければならない部分もあり、多くの困難が伴うことが予想されるが、わが国の造船業をめぐる事業環境の変化は非常に早く、可能な限り速やかな対応が望まれる。

本報告書は、経営資源的に厳しい状況の中で、競争力を一層高めるための効率的かつ的確な研究開発実施体制のコンセプトを提示したものであり、ともすると硬直的になりがちな現状の研究開発体制の変革に向けて、一石を投じることができたと考えている。ここで提案された内容が、将来に向けての新しい研究開発体制の構築、及びそれによる競争力向上の契機となることができれば幸甚の至りである。

 

 

 

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